第4章 スウェーデンの地方自治体と男女平等のとりくみ、市民と自治体の連携(女性の眼から見たスウェーデンの市民社会④)

スウェーデンの地方自治体では、長期的に自分の専門分野に取り組む事ができるます。また、プロジェクトごとに市民との相談、対話がおこなわれ、情報公開も徹底して、開かれた市役所であることが大きな特徴でともいえます。

スウェーデンの市役所と男女平等政策

ウプサラ市の例*スウェーデンの地方自治体での男女平等のとりくみについて、12000人の職員に男女平等政策を浸透させている職員を対象に、プロジェクトごとに対話がおこなわれ、長期的な取組みがなされている開かれた役所と職員の働き方を取材しました。

ウプサラ市は、12000人の職員がおりそれぞれ専門があり、その専門分野で働くシステムで、日本の公務員のように短い期間で仕事が変わることはありません。男女平等についても歴史が古く、行政内部で推進すれば外部も自動的に変化するという考えでしたが、そうならないことにスウェーデン政府が気づき、2007年から予算をくみ、総額2億クローネの資金を各自治体や県に提供しました。

長期的に自分の専門分野に取り組むスウェーデンの地方自治体職員

取材に応じてくださったエマさんは、もともと大学で人材学を勉強、その中に男女平等を研究し、仕事をしながら、職業訓練などを受けてさらに専門を磨きました。市役所では10年間働き、始めは社会保険の仕事、後半5年は男女平等を担当して,幼稚園、保育、学校など市の提供するサービスに男女平等の視点をいれる仕事を主としています。

ウプサラ市も2009年から男女平等統合化にとりくみました。今までの取り組みは短期で、プロジェクトが終わるともとにもどってしまうという反省があり、ひとつが終わると次に結果を学びながら引き継ぐというもかたちの4年間で4つのパイロット事業をおこないました。

若者のための余暇施設は、市内20箇所位ありますが、若者が、学校が終わってからの夜と週末を過ごし、自治体の職員が常駐する余暇施設ですが、かつて利用者の75%は男子でした。女子の利用を増やすことが課題ですが、それには自治体の70人の余暇施設職員の意識改革も必要でした。

余暇施設の、女子の利用の少ない理由を調査したところ、女子の好きな活動が少ない、職員の態度が乱暴であるなどの実情がわかってきました。そこで、女子の専用の時間づくりなどが必要なのでは観点から、余暇施設職員との4年間の取り組みがはじまりました。

スウェーデンではおさめている税金に対して、対等にサービスを受ける権利があります。余暇施設自体が男子に向いているとしたら、女子に向いている施設を別につくるのか、予算をカットするのか。常に男女平等の視点を皆の意識におきながら対策を継続的にとるが必要です。

次の段階では、管理職500人全体に男女平等事業の意識改革が導入されました。全ての管理職が実施できるよう教育され、また常に結果が求められました。管理職の教育からはじまって2年かけて12000人全ての職員の意識改革を実行し、不平等なところを全て把握するというプロセスをたどりました。

さらに大学の研究者が男女平等の取り組みをフォローし、どのようなしくみをつくったらよいか模索します。また自治体が失敗したとりくみもフォローし、毎年プロジェクトの評価をして報告書を作成、その結果を行政に活かすようにしています。このように、研究者と行政が組んで、ふたつの別の世界が交流できる形が実現しました。

市民と自治体の連携

日本では自治体が計画をたて、部分的に審議会などの会議を開き、そこに学識経験者や、公募で集まった市民とともに会議を開きますが、こちらでは、研究者と連携し、市民と相談し対話することは法律によって決められています。

たとえば新しい計画、道路をつくる場合には、学校を会場にして市民を集め、公聴会など開くなど、さらには市民が文書で意見を提案したり、良い提案があればそれを計画に盛り込みむなど、役所と市民の交流も進んでいます。

(まとめ)日本の市役所が2年間など短い期間で担当者が変わってしまうのに比べ、スウェーデンの地方自治体では、長期的に自分の専門分野に取り組む事ができ、じっくり腰をおちつけて責任のある仕事ができそうだなと感じました。また、プロジェクトごとに市民との相談、対話がおこなわれ、情報公開も徹底して、開かれた市役所であることが大きな特徴でともいえます。外部の大學などの研究者との連携も進められたり、また失敗も共有されることで行政に活かされるのは素晴しいと思いました。

次章では、市議会におけるボランテイア議員とはどんなものか、女性議員の活躍をみてみましょう。

スウェーデンの幼稚園:プレスクールの教育(女性の眼から見たスウェーデンの市民社会②)

ウプサラ市のカモミール幼稚園を取材。スウェーデンではプレスクールを教育省管轄下に置き、子どもが生まれると早ければ1才から通わせることができ、3歳からは無料。その組織の在り方や教育内容に密着しました。環境教育、民主主義、移民の文化など配慮した持続可能な教育とは。

スウェーデンではプレスクールを教育省管轄下に置き、子どもが生まれると早ければ1才から通わせるうことができます。3歳からは無料です。また、給付金と就学前教育が連続しているシステムになっていることがわかります。ウプサラ市バクサーラ地区のカモミーレン幼稚園に取材しました。(取材、編集 ナレーション、音楽 小林範子)

第2章 スウェーデンのプレスクールの一例、カモミール幼稚園

取材に応じてくださったこちらは、ウプサラ市ヴァークサラ地域プレスクール行政担当責任者(レーナ・エリクソン氏)、カモミールを含む2つのプレスクール園長(ヘレーネ・シェイセル氏)、カモミール幼稚園の教諭(エーヴァレー氏)です。

ウプサラ市バクサーラ地区プレスクールの組織、地区の統括的責任者(1名)プレスクール長(3名)は複数の園長を務めます。各ぷれスクールごと能力開発グループがおかれ、教育の機会均等が実現されます。教諭と保育士については、教諭は3年半の大学教育により与えられる教員資格保持者、保育士は高校の保育士養成課程を卒業するか、成人のための保育士養成講座を習得することが求められます。

伝統的ジェンダー固定観念を押付けないスウェーデン教育

プレスクールは、スウェーデンの教育政策の重要な一部であり、その指導内容は、学校法や教育指導要領によって定められています。さらに、市が提示する課題や父母からの要望に基づいてカリキュムを定められます。幼稚園が民主主義を原則として、持続可能な発展を目指して運営されているということは、日本の私たちからはおどろくべきことでした。

カモミーレン幼稚園での教育についてエヴァレーな先生にお聞きしました。カモミーレン幼稚園での重点に置いている目標は、すべての子どもを個人として尊重し、それぞれの長所を伸ばす教育をおこなうこと。集団行動の中ですべての子どもが発言する機会を保障されるよう心掛けること。そしてジェンダーについてオープンに話しあい、様々な家族形態があることを理解させ、子どもたちが遊びや話し合いの中で自由に自己表現できる環境を創出し、伝統的ジェンダー固定観念を押付けないことです。

たとえばジェンダー教育としては、女の子に赤いコップ、男の子に青いコップを持たせるということをさせないようにすることが大切です。さらには、他民族の文化を尊敬する意識を育てるために、移民の母国語とスウェーデン語双方を学び、またそれぞれの文化などにも注意を払います。

プレスクールのSDG’sとしての環境教育

また、カモミーレンで重点をおいているのが環境教育です。学習指導要領がでは、自然と環境の保護を大切にする姿勢を育てること、自らが生態系の一環であることの自覚を促し、現在及び将来の自然環境をより良いものにしていくための日常生活や活動の在り方を理解することが求められています。 

基本的に毎日外遊びから1日が始まるのですが実践では、なるべく戸外で過ごす機会を確保し、自然変化や営みへの気づきやいたわる気持ちを育て、ます。、また、資源のリサイクルを実践し、自分たちが自然の循環の一員であることに気づきます。

戦略的な能力開発グループ方法として、教育学に基づいて学習環境の提供すること、 こどもの発言を残すなどの記録の保持すること、逆転発想(ある子どもが問題行動をした場合、子どもの問題性に注目するのではなく、引き起こした環境や状況の議論)することが求められています、これらは、一定期間ごとに視察と評価が行なわれ、さらなる改善が求められます。

カモミーレンでは査察で3つの指摘をうけました。ひとつは多言語性、つまりスウェーデン語以外を母国語とする子供への配慮や異なる文化への理解を促す取組みを増やすことへの指摘、二つめなジェンダーに関する取組え男女差や男女の特質等の固定観念を植え付けさせないようにすること、および集団構成の問題で、プレスクールでの子どもの生活集団が、それぞれが1歳から5歳まで年差のある子どもで構成されるのですがその構成の仕方に関して指摘を受けました。

プレスクールの基礎教育に遊戯、言語、算数、文化の継承

学校教育につながる基礎教育としては以下の事にとりくんでいます。数を意識し数の概念を体得する取り組み名前や身近な単語が文字に表されることを理解する取り組みなど具体的には。

①遊戯=歌、踊り、絵、演劇、スピーチ、筆記

②言語=スウェーデン語と母国語

③算数、環境教育、戸外散歩

④文化の継承ー移民の場合は母国も

同一のカリキュラムだが、各施設ごとに実践されます

さまざまな変装衣装で子どもたちは互いにユニークさを競う

お絵かきコーナー:では絵をかきたい子が自分で紙やクレヨン(チョーク)などを出して使って、自分で片づけるシステムで、日本のように一斉にお絵かきの時間ということはないようです。また、さまざまな変装衣装などがあり、子どもたちは互いにユニークさを競う。

まとめ スウェーデンのプレスクールは、人として生きてゆく上での最も重要な事柄を核とし、子どもも社会の宝として皆で育ててゆこうとする姿勢で貫かれています。ひるがえって日本の子育ては、保育所が不足し母親が孤立化しやすく、また幼少時から技能の習得など成果のみえやすい部分に注意がむけられがちであることをあらためて感じました。

スウェーデンの教育と仕事とキャリア(女性の眼から見たスウェーデンの市民社会③)

スウェーデンの子育てや教育についてみてきましたが、キャリアではどうでしょうか。こうした教育は将来の仕事や生活にどのように反映するのでしょうか。「スウェーデンの学校では、子どものひとりひとりの意見アイデアを大事にする。自立することを求められており、日本のように用意された『正解』が得られるよう学習塾など通う習慣はありません、大人になっても、夢を持って追求するということが評価されることから、起業をめざす若者が多いのもスウェーデンの特徴のひとつです。

前述のマリーンさんは、会社にはいる前に個人事業主になりましたが、会社を経営してみて、社会制度の給付金をもらうにもざまざまな手続きをしなくてはならなく、雇用する側の大変さを知ったといいます。

しかし会社をつくってうまくいかず失敗したとしても、スウェーデンは夢を持って追求するということが、評価される社会。「スウェーデンは、再チャレンジ可能な社会といえるといいます。

女性の視点から見たスウェーデンの教育と仕事
スウェーデンでは、統計にもとづき、政党候補者、閣僚、企業幹部の女性比率など、政策的に男女平等が推進されていますが、その実情を探ります。

ただ、育児休暇がキャリアに影響をおよぼさないわけではありません。女性登用に関しても、法律で幹部や政治家など一定の割合は女性にしなければいけないということになっていますが、一方では行き過ぎではないかというという意見もあります。意識は変わってきているとはいえ、昔の男女の役割も残っている地域もあります。

高校教師のミカエルさん。男生徒と女生徒では、女性の方が圧倒的に優秀でも結果をみると、男性が採用されたり選ばれたりすることが多い。それは自分が理解出来る人、似たような価値観の人を選ぶという傾向から、選ぶ側が男性だと、自然と男性が男性を選ぶというということになりがち。それが彼らにとってシンプル自然なことだからと言います。

ただ、スウェーデンでは、政党の候補者のリストを男女交互にしたり、閣僚を意図的に半分女性にしたり、企業の幹部の一定の割合いを女性にすることを法律で決めたり、政策的に男女平等を推進するユニークなとりくみをおこなうことに特徴があります。

それを推進しているのは、ウプサラ大学ジェンダー研究センター。スウェーデン統計局と共同で男女平等にかかわる様々な指標の国内統計をまとめて小冊子として毎年発行しています。因みに、ある機会について男女不均衡が4:6を超えると不平等と判定されます。

ジェンダー研究センターでは、それらの基礎として、スウェーデンの国家政策として男女平等を実現する効果を上げてきた法律や課税制度の改革・整備もおこなってきました。たとえば、労働法で正当な理由にあたらない解雇や差別を禁じる法律の整備や、課税の個人単位への改革などです。

スウェーデンでは、女性の議員や企業の役職者が半数近くをしめています。男女くらべると賃金は 女性は男性より25%程低くなっています。

女性は①医療、②介護、福祉、児童ケア③幼稚園、小学校の先生など、公務員が多く、男性は民間企業のアドミニストレータやエンジニア、営業職、技術、運輸関係などが多いのが特徴です。

スウェーデンも公務員の仕事は安定していて条件もよいのですが、給料は民間より低いので、民間の方が収入面ではよいという認識があります。

ウプサラ地域の女性経営者のネットワークBusiness in Heartの早朝のミーテイングでは、具体的に求めていることや提供できること をそれぞれが提示してゆきます。ビジネス上の情報を交換するだけでなく、気持ちの触れ合う付き合いを求めて始まった会です。 男性のほうがビジネスの上で信用されやすいのでは、といったデメリットへの対策も話し合っています。

スウェーデンの若者の失業率の高さと職業訓練

スウェーデンでも若者の失業率の高さは問題になっています。このグラフからも高齢者と比較して、若者の失業率の高さが目立ちます。

ミカエルさんはいいます。ヨーロッパ全体で若者の雇用が減っている影響から、スウェーデンも最近は企業が1年か1年半の給料を保障して解雇できる制度が出来、簡単に人を解雇してしまうのことが問題になっています、「以前は失業しても失業保険による社会の保障が充実していましたが、だんだん社会の保障が弱くなっていると感じるそうです。

しかし、労働市場の政策的な面からも、経験を積んでゆくことは奨励されています。自分の専門分野で仕事がなければ、別の分野で勉強して仕事をすることが失業対策にもなっています。

職業訓練は、はっきりした狙いがあって職業安定所が行なっています。卒業すれば仕事がある。というのが魅力です。

スウェーデンでは、パートタイム労働もフルタイム労働も同一時間の労働の価値は同じと考え方から賃金は同一水準で支払われ、社会保障も同じです。

育児期にパートタイム労働に従事する女性は,高い割合を示しますが,正社員として働いていた職場を退職するのではなく,正社員の身分のまま,フルタイム労働からパートタイム労働に転換し,仕事を継続することになり、このシステムが,育児期の女性が仕事を辞めずに継続就業していくことを容易にしているともいえます。

2014年時点で、日本では、妻が年収103万円以下なら納税義務がなく扶養する夫も配偶者控除を得られ、また妻が年収130万円未満なら、保険料を負担せずに国民年金や健康保険に加入することができます、超えると自ら支払い負担することになることから、働く意欲をそぐことにもなり、就労拡大を抑制しているともいえます。

まとめ:日本では、子育て支援が十分でないことから、子どもを持つと仕事やめざるをえない女性はまだまだ多いといえます。しかし、一端仕事をやめると、再就職は難しく、また専業主婦を優遇する税の制度もあることなどから女性が能力を活かしてはたらいたリ、社会の一員として貢献したいという意欲をさまたげるハードルはまだまだ高いといえます。また、パートは正社員と時給あたりの賃金で差別されているという事情もあり、個人の幸せを守る代償は日本ではスウェーデンより大きいといえます。女性の就業率と出生率が比例するスウェーデンでは、男女とも個人の幸せを重視したライフスタイルをつくるための官民一体の努力が長く積み重ねられてきているのです。

スウェーデンの生活、子育て、教育、仕事、家族のあり方(女性の眼から見たスウェーデンの市民社会①)

日常生活、政治、子育て、教育、仕事、家族のあり方、スウェーデンの市民社会は、女性の視点からみたら、どのようになっているのでしょうか。私達一行(日本から4名、スウェーデンに住む女性5名)は、主に女性と教育という視点からウプサラ(Uppsala)市に居住し、勤務する人達を取材し、男女平等先進国と言われているスウェーデンの実情の一部を探ってきました。音楽は自作曲、虹の玻璃(チェロ:毛利巨塵、ピアノ小林範子)です。

第1章サムボ(事実婚)のカップルに聞く子育てと仕事
スウェーデンの女性の就業率は9割近くにものぼり、一方で子どもの出生率は日本を上回っています。給付金と就学前教育が一体となったスウェーデンの男女の子育てと就労のしくみを取材。

ウプサラ市は、人口20万人。ストックホルムから電車で40分、古くから政治と宗教の中心地で、歴史あるウプサラ大学と教会が並びます。

最初におとづれたのは、ウプサラ郊外に住むMichael HakanssonさんMalin Vessbyさんのお宅です。お二人はサンボという事実婚のカップルです。二人には6歳と三歳の男の子がいます。ミカエルさんは高校の社会の先生、今は休職し、大学院に通っています。マリーンは元々陶芸家で、その上にジャーナリズムを勉強して、起業、今はストックホルムの会社で雑誌の編集長をしています。

日本経済新聞の記事よると、2011年20~64歳のスウェーデンの専業主婦の割合は2%、平均就業率は88%にのぼります。課税は個人単位ですが日本のような主婦に配慮した税制はありません。一方で、スウェーデンは出生率も日本より高く、一人の女性が生涯に生む子どもの数、合計特殊出生率は、1.89で、日本と1.43と比べて上回っています。

背景に、育児給付制度であるペアレント給付金が充実していることがあげられます。育児休暇は夫婦二人で480日の取得できそのうち、そのうち60日は譲渡不可なため男性の育児参加を後押ししています。また390日間は給与の8割が保障されています。

ご主人のミカエルさんです。スウェーデンでは育児休暇中の収入の80%の保障があり、その額を考えて、どれだけ自分たちで育児休暇をとるか決めるのですが、私たちの場合は、給料や育児休暇の保障をあまり考えずにそれぞれ1年間育児休暇をとって、2歳からプレスクールにあずけました。また子どもが生まれる時にも10日間追加して、20日間の休暇とりました。

12就業率と出生率をともに増加させているもうひとつの理由は待機児童ほぼゼロを可能にしている、プレスクールとよばれる幼稚園の存在です。教育省管轄下におかれ、子どもが生まれると早ければ1才から通わせることができます。3歳からは無料です。

スウェーデンでは、子どもは社会のものという考えもの1歳から通える教育のシステムがあります、女性の視点からみると、男女格差をなくす法制度を整え、賃金格差もなくし、全体として給付金と就学前教育が一体となって両親である男女の就労をも助けている姿が浮かびます。このようにして仕事と子育ての両立が可能になっているのです。次章では、子どもの自立心、男女平等、人種など民主主義を基礎にした教育がおこなわれているプレスクールを取材します。

スウェーデンの女性国会議員とマイノリティー議員(女性の眼から見たスウェーデンの市民社会⑥)

スウェーデンの政治のしくみはどうなっているのでしょうか。女性国会議員*スウェーデンの女性国会議員アン・クリステイーン氏エ・ヴェストルンド氏を取材。マイノリティーから政治家への歩みや政治家としての日常を取材。地域による格差や、失業問題と若い女性の保守化など最近の問題点もお聞きしました。(取材、編集、音楽、小林範子)

第6章 女性国会議員*スウェーデンの女性国会議員アン・クリステイーン氏エ・ヴェストルンド氏を取材。マイノリティーから政治家への歩みや政治家としての日常を取材。地域による格差や、失業問題と若い
女性の保守化など最近の問題点もお聞きしました。

2014年当時に取材した、「女性の眼から見たスウェーデンの市民社会」第6章のレポートをお届けします。スウェーデンでは、環境党 社会民主党など国会議員の半数近くを女性の議員がしめており、2010時点で、24大臣のうち半分12人は女性大臣となっています。もっとも女性議員は社会保障や家族などに関連した分野が多いという偏りがあります。

こんな中、エネルギー政策に関わる社会民主党の国会議員アン・クリステイーン・ヨハンソン(Ann-Kristine Johansson)さんと同じ党の国会議員でEU担当でゲイでもあるボリエ・ヴェストルンドさんをストックホルムにある国会にたずねました。

社会民主党の前国会議員アンクリスティ・ヨハンソン氏です。産業委員会でエネルギー政策を担当していました。スウェーデンでは、国民の環境意識が高く、エネルギー議論が活発になっている中で、党は代替えエネルギーを条件に長期的に原発を廃止するという方針を打ち出しました。原発の位置づけを考えるため、いわきから福島をおとずれ、原発20キロ圏内に行って経験したことを伝えています。

ボリエ・ヴェストルンド議員(社会民主党)。は。産業委員会でEUを担当。EU主導の政策以外に、医療、学校、介護についてはスウェーデン独自の政策を持っています。中小企業の問題も担当。地域の問題、地域の均等、平等が課題といいます。

ボリエ氏はゲイの議員でもあります。国会では、同性カップルの養子縁組など家族法に関わる法改正や差別をなくすための政策にも取り組んでいます。

スウェーデンの代表的なゲイの団体、RSFLは70年代になると、アメリカから刺激をうけて運動がはじまりました。また95年の同棲法、2009年には婚姻法が変わったことなども影響しています。ゲイでは91年には初めて国会議員が当選しましたが、残念ながら2年後にエイズで亡くなりましたが、また98年、2002年に数人が議員になりボリエさんもその一人でした。

近年急速にLGBT、つまりレスビアン・ゲイ・バイセクシャル、トランスジェンダーなど性的マイノリティーが社会に浸透してきています。プライドフェスティバル2010では、党の態度は世論の動きに敏感で、議員も個人としてプライドフェステイバルなどに参加しています。

お二人が政治の世界に踏み出すきっかけは、労働組合活動に情熱を燃やしたこと。農業が盛んなヴァルムランド出身で、牛の乳しぼりから職業生活を始めたアンクリスティ氏は農業従事者の組合から。ストックホルムのサービス業出身のボリエ氏は、ホテル・レストラン業従事者組合からです。働く者の権利や生活を高める運動から、政党に入って政治家として歩み始めるのは、多くの社民党議員に共通しています。

アンクリステイ議員は電車で320キロ、3時間片道かけて月曜にスウェーデンへ来て、金曜に地元へかえります。国会にはいったのは1994年当時、息子のデニスさんは2歳だったのであまり子育てはできませんでした。

政治と家族運営を一緒にというのは、なかなかむずかしいうようで。若い女性の国会議員のために女性議長が国会の中に保育所を作りました。

国会議員の待遇については、地方自治体の議員とは違って、専任で報酬は月額6万クローナ(為替相場により70~100万円位)。お金の使い方にはとても細かいルールがある。辞めてからも年金に加算があるなど、かなり手厚い待遇が保障されていますが、退職金、年金など改革し、ほぼ公務員と同じにしようとしています。寄付については、個人と企業が名前を出さず政党に寄付できるしくみになっていますが議論をよんでいます。

スウェーデンでも、若い世代では就職の難しさも相まって、保守回帰とも見える結婚や家事・育児重視の傾向が見えるようです。以前は、男女平等がもっと過激な形で押し進められていましたが、今は、若者の間で少し、昔ながらの価値観に戻ろうとしている傾向がみえています。

アン史は「息子の大学生デニスさんのような若い年代になると、女性は将来、奥さんになって家で子どもをもってイメージをもったりしており、そのことは、若者の失業も影響したりしているかもしれませんが」 と語ります。

スウェーデンでは、男女ともに社会で働き、税をおさめることが大前提で、そのため育児休暇やプレスクールなど支援政策は、相当充実させることができています。保育や介護など、個人的に。基本的には何もしなくてよいことになっています。

しかし、実情は、各自治体によりかなり大きなばらつきがあります。とくに高齢者に必要とする支援が十分届いていない現状が伝わってきます。今後は自治体によって益々格差がひろがるともいえるようです。

介護サービスの実情は、介護を担う自治体の財政が苦しく、人手も介護施設の収容数も不足している自治体も多くみうけられるようです。不十分な公的支援に不安や不満を訴える老親のもとに通って助けなくてはいけない子世代が漸増している。介護の実施責任は各自治体なので、介護の量・質の決定には住民の意志が反映されます。

(まとめ)労働組合活動から国会議員へ、農村地方の女性やゲイなど多様な国会議員が活躍しているスウェーデンでは、男女平等も過激な形で押し進められてきました。が、今は若者の失業も影響していて、若者の間では仕事との関連で、男女とも子育ての在り方など柔軟に対応しながら人生を模索する姿がうかがわれます。

からふるxダイバーシティ」シリーズ「音楽で繋がる参加型レクチャー」終了しました

3回にわたりました、「からふるxダイバーシティ」シリーズ「音楽で繋がる参加型レクチャー」(令和2年度男女共同参画推進センター市民企画講座)が終了いたしました。ご参加いただいた皆様にはご協力いただきありがとうございました。

音楽で繋がる参加型レクチャー第3回より

第5章 市議会女性ボランテイア議員(環境党)と選挙スウェーデンでは、議員の半数は女性、市議会議員の中心メンバーとしてボランテイア議員が活躍。環境党ではどのように議員を育てているのか、また、若者の政治意識の育成に大きな役割を果たす学校への環境党の取組みを取材。https://youtu.be/zM-h68fkKMU

第6章 女性国会議員とマイノリティー議員(社会民主党)社会民主党の前国会議員アン・クリステイーン・ヨハンソン氏とゲイ議員でもあるボリエ・ヴェストルンド氏を取材。マイノリティーから政治家への歩みや政治家としての日常を取材。地域による格差や、失業問題と若い女性の保守化など最近の問題点もお聞きしました。

https://youtu.be/B3S2ErUoV0k
取材・編集・音楽 小林範子制作統括 萩原宏人 公益財団法人ハイライフ研究所

その後 「ひろたんとピアノ」の音楽療法の映像をみながら、ダイバーシティの観点からお話させていただきました。

ひろたんとピアノ


質問は、以下のように考えています。
1 現在のスウェーデンのコロナへの人々の感じ方など
2 若者をはじめとする人々の政治参加の様子
3 LGBT、性的マイノリティーの社会への浸透してきています。
4 失業問題と若者への影響
5 地方の格差。医療、介護サービスの実情など

スウェーデンの市民社会、手話講座、音楽講座、そして音楽療法と多岐にわたり、さまざまにダイバーシティの課題に取り組んできましたが、興味があるものがございましたり、ご意見などございましたら、男女共同参画推進センターに直接、ご要望をお伝えしていただきたいとおもいます。またこちらにご連絡いただいても結構です。

このように、進めてまいりましたが、全ての会に出られなくて、内容を知りたいという方は、現在 あけぼのホールで、あけぼのコーラスを作っていて、そのメンバーともとにイベントがある時だけ参加してゆく「からふる合唱隊」をはじめていますので、本日「虹の玻璃」を歌ってくださった方は、またからふるのライブのイベントなどがある際によろしかったらぜひ一緒に虹の玻璃を歌っていただけたらとおもいます。

虹の玻璃

最後になりますが、主催者の丸山泉美さん、スタッフの坂上淑恵さん、コーラス事務局の山梨曙さん、手話のもりかずえさん、そしてさいたま市男女共同参画推進センターのみなさま、大変ありがとうございました。

スウェーデンの女性ボランテイア議員の活躍について聞きました。(女性の眼から見たスウェーデンの市民社会⑤)

2014年にウプサラを訪問した際の報告シリーズ第5章です。女性の目からみたスウェーデンの市民社会女性ボランテイア議員の活躍*地方議会における若者の政治参加のしくみをレポートします。

第5章 市議会女性ボランテイア議員(環境党)と選挙
スウェーデンでは、議員の半数は女性、市議会議員の中心メンバーとしてボランテイア議員が活躍。環境党ではどのように議員を育てているのか、また、若者の政治意識の育成に大きな役割を果たす学校への環境党の取組みを取材。

日本では、市議会議員は有給ですが、スウェーデンでは、市議会議員の中心メンバーとしてボランテイア議員が活躍しています。その活躍をみてみましょう。議員は、余暇政治家(ボランテイア)と執行委員(有給)から成り立ち、市長は市議会の執行委員長が勤めることになっています。議院は男性51% 女性48%です。(2014年)

環境党所属の議員 マレーナ・ランチさんにお話を聞きました。市議会はボランテイアで、福祉のNPOの有給職員として普通に仕事を持つ余暇議員(ボランテイア議員)です。2006年に24歳で初めて環境党の党員になり、8年になる今年です。社会保障に関係した委員会に参加して健康と介護委員会の副委員長を務めています。

マレーナさん議員の仕事と日常の仕事についてお聞きしました。「議員としての仕事としては、日常は平均週に3日の夜を市議会、専門委員会、環境党が行なっている準備のための委員会といった政治活動にあてています。日常の仕事は非営利の障害者の団体のプロジェクトリーダーとして働いています。

議員活動と仕事を両立する中、フルタイムの仕事を休んだり、遅れたりすることもあり、結果を出せないというジレンマからストレスを感じるそうです。また政治家としてキャリアをつむためにはいろいろな会議に参加する必要がありますが、フルタイムで働き、一人で子育てしている女性議員の場合は、昼の会議は仕事を休んで、夜は子どもとの時間を割くことになり、工夫してでも無理がある、このことはなかなか理解してもらいにくいそうです。

女性特有の問題としては、ネットでのいやがらせがあるようです。若い女性の政治家などの活動をFacebookなどで邪魔するような内容を送るというもので、加害者の95%が30歳以下の男性だとわかっています。これは若者と失業問題とも関わっています。 党では学校教育が大切だが、将来に帯する不安のある若い男性に対する対策が、失業対策と絡めて必要と考えているそうです。。

マレーナさんのように若い政治家を輩出する背景はどこにあるのでしょうか。スウエーデンで若者の投票率は80~90%と高く、高い。若者の政治参加への強い関心がうかがわれます。全国の高等学校を中心に任意で(模擬選挙)が行なわれ2010年には1200校、36万人が参加しました。このように政治参加には学校が大きな役割を果たしています。学校で政党を学校に呼んで議論したり、また学生が政党を訪問したり、課題についてインタビュ―したり、調べたりして政治に対する意識を高めてゆきます。

sweden image bank

若者の政治参加について、環境党の場合は、18才から25歳が、最も投票率が高いのですが、彼らは環境に対する意識が高く、男女平等、難民、移民政策、教育など、関心を持っているテーマが身近な問題であることが支持の理由です。若者を支持層にとりこめると長い期間支持を期待できるので、環境党だけでなく、各政党とも若者を大切にしています。

環境党事務局書記のチャールズフィラードさんにお聞きしました「環境党は、議員の任期に関する党の内部のルールを決めていて、議員の任期は4年ですが、議員として勤められるのは3回まで。そのため常に新しい人を入れてゆく必要があります。市議会議員には、幼稚園の先生や警察官など、多様な議員が生まれるような制度にしています」この環境党のローテーションは他の政党にも良い事例とみられています。

候補者はどう決めるのでしょうか。環境党の場合は、誰でも立候補できますが、党内の選挙管理委員会で、候補者のリストから、男女平等、年齢、移民、農村部と都市のバランスなど考慮し、調整したリストを作成し、それをもとに党員が再度投票して承認を得る形をとっています。候補者のリストは、女性男性交互に並べるそうです。

また政治活動や選挙に関わる資金の面で日本とは大きくことなります。「選挙では、党の大きさにあわせて、各政党に国からの活動資金が拠出され、職員を雇ったり、印刷物を制作したり、選挙のキャンペーンに使用するすることができます。政治資金は基本的に政党にはいるしくみで、。個人は受け取るのは禁止われています。」寄付については民間団体からの各政党への寄付は公開されていませんが、多くの政党は、公開すべきと考えています。

スウエーデンで若者は日本に比べ、政治への意識が強く、投票率は高いといえます。そのスウェーデンでは学生時代を通じて政治参加の意識が養われ、その結果ボランティアでも政治に関わりたいと思う人たちが増え、その結果、政治はボランティア議員で成り立っています。そこにスウェーデンの強さがあると感じました。

このようにスウェーデンでは、教育と政治は関連しあい、若者や女性などの興味を引き出し、政治への参加を容易にし、お金のかからない選挙が、政治に活力を生み出しています。選挙費用は政党が持ち、日本のような選挙への参加に多額の資金を必要としません。こうした事が、若者や女性の政治への参加を容易にしています。

翻って日本のように若者が政治に関心が低く、投票率も低いと、選挙に行って投票する人達も決まってしまい、社会を変えてゆく力にはなりにくい現状を批判するだけでなく、受験勉強一辺当にならない、社会に生きる学校のありかたも模索されます。

女性の眼から見たスウェーデンの市民社会

女性の目からみたスウェーデンの市民社会 YOUTUBE
http://kobayashi-noriko.blogspot.jp
女性の眼から見たスウェーデンの市民社会」は、シリーズ「スウェーデンから見た日本の再構築」から学んだことをベースに、2014年2月に行なったスウェーデン視察の報告です。ウプサラ市に居住、勤務する人達を取材し、男女平等先進国と言われているスウェーデンの実情の一部を探りました。政治、教育、家庭、子育てを両立させて働く女性たちに関する6つの報告をお届けします。公益財団法人ハイライフ研究所より10月15日に配信になりました http://www.hilife.or.jp/wordpress/
youtube
映像報告「女性の眼から見たスウェーデンの市民社会
第1章サムボ(事実婚)のカップルに聞く子育てと仕事
スウェーデンの女性の就業率は9割近くにものぼり、一方で子どもの出生率は日本を上回っています。給付金と就学前教育が一体となったスウェーデンの男女の子育てと就労のしくみを取材。
https://youtu.be/hemJyJJnvuY

第2章 スウェーデンのプレスクールの一例、カモミール幼稚園
ウプサラ市のカモミール幼稚園を取材。スウェーデンではプレスクールを教育省管轄下に置き、子どもが生まれると早ければ1才から通わせることができ、3歳からは無料。その組織の在り方や教育内容に密着しました。環境教育、民主主義、移民の文化など配慮した持続可能な教育とは。
https://youtu.be/gF45w0SlOCw

第3 章 女性の視点から見たスウェーデンの教育と仕事
スウェーデンでは、統計にもとづき、政党候補者、閣僚、企業幹部の女性比率など、政策的に男女平等が推進されていますが、その実情を探ります。
https://youtu.be/M0wzIv-ccJw

第4章 市役所職員と男女平等政策
12000人の職員に男女平等政策を浸透させている職員を取材。プロジェクトごとに対話がおこなわれ、長期的な取組みがなされている開かれた役所と職員の働き方を取材。
https://youtu.be/Q9BDBDl2Qr0

第5章 市議会女性ボランテイア議員(環境党)と選挙
スウェーデンでは、議員の半数は女性、市議会議員の中心メンバーとしてボランテイア議員が活躍。環境党ではどのように議員を育てているのか、また、若者の政治意識の育成に大きな役割を果たす学校への環境党の取組みを取材。
https://youtu.be/zM-h68fkKMU.

第6章 女性国会議員とマイノリティー議員(社会民主党)
社会民主党の前国会議員アン・クリステイーン・ヨハンソン氏とゲイ議員でもあるボリエ・ヴェストルンド氏を取材。マイノリティーから政治家への歩みや政治家としての日常を取材。地域による格差や、失業問題と若い
女性の保守化など最近の問題点もお聞きしました。https://youtu.be/B3S2ErUoV0k
取材・編集・音楽 小林範子制作統括 萩原宏人 公益財団法人ハイライフ研究所