議会活動報告「鳥の眼と小さなアンブレラ」第3号

一般質問 広い視野や国際感覚を持ち川越の魅力を発信できる英語教育の推進              
一般質問 小林範子

今後、グローバル化が進むなか、どのような職業に就いても外国語が様々な場面で必要とされる可能性があります。児童・生徒にとって、国や郷土が育んできた伝統や文化を基に、広い視野を持ち、自分の考えや気持ちを英語で伝えていく力をつけることは重要なことです。が、日本の英語力は世界111ヵ国中87位と下がっていて、若い世代の英語力低下が目立っています。
そんな中、身近に観光資源があり多くの外国人観光客が訪れる、また外国人の留学生が身近に多くいる、外国人と接しながら、自然に英語の勉強が楽しくなるような形での教育効果が期待できる、このような川越の素晴らしい地域特性を教育の中で活かせないかと考えております。
広い視野や国際感覚を持つ児童生徒の育成のためには、まず地域に誇りと愛着を持つことも重要だと考えております。自らの文化や身の回りのことを知り、それを伝える。英語科だけでなく、社会科の視点では、観光資源の現状について十分に学ぶ機会をふやし、地域が抱える課題解決についても考えることができたら素晴らしいと思います。
市の財政の面からも、住みたい地域、移住したい地域として川越市が選ばれることは重要ですが、それには、教育が重要な要素の一つと考えます。英語教育の現状からお伺いいたします。

第1問目 国が目指している英語教育はどのようなものか。
1 国の第4期教育振興基本計画の中では、施策の成果を図る指標として、英語力について、中学校卒業段階では、実用英語技能検定3級取得程度の力を持っているとされるCEFR-A1レベル相当以上、高校卒業段階では、実用英語技能検定準2級取得程度の力を持っているとされるCEFR-A2レベル当以上を達した中高生の割合を、5年後までに6割以上にすることが示されております。

第2問目 外国語によるコミュニケーション能力をどのように育成しているのか。
各学校では、学年に応じて、学習指導要領に示されている「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」「書くこと」と5つの領域について、様々な場面や状況等を設定した言語活動を行うことで、自分の考えや気持ちなどを適切に表現できるコミュニケーション能力を育成しております。

第3問目 指標となる中学校卒業段階で、CEFR-A1レベルの子供たちの割合の推移は。
中学校卒業段階で、CEFR-A1レベルの子供たちの割合について。直近3年間の推移は、
令和元年度は全国で42.0%、本市では41.3%
 令和3年度は全国で46.9%、本市では46.1%
令和4年度は全国で49.2%、本市では54.5% となっております。

第4問目 本市の英語教育の課題について伺いたい。
CEFR-A1レベル相当以上の生徒の割合は、毎年上昇しているものの、第3次川越市教育振興基本計画における目標の70%には、まだ到達しておりません。特に、「話すこと」の領域に関わる言語活動において、児童生徒が、活発に自分の思いを英語で話したり、聞いたりする機会を充実させる必要があると考えております。

第5問目 本市で行っている外国語活動、外国語科研究委員会で検討を行なっていることは。
委員会は小中学校の英語教育を専門とする校長及び教頭の代表者、並びに外国語を担当する教員の代表者6人で組織しています。研究会で「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業の在り方」について検討し、授業モデルを作成、授業の方策や、英語指導助手の効果的な活用方法等について検討し、アイディア集やワークシートなどを作成し、各学校に配布、周知しております。

第6問目 本市では英語を母国語とする英語指導助手を授業の中でどのように活用しているのか
英語指導助手が、教師とのやり取りや発表の例文を児童生徒に行ってみせたり、発音のモデルとなり、児童生徒の発音を指導したりしております。また、児童生徒が学んだ表現を使って、英語指導助手と直接やり取りする場面を設け、英語を用いて主体的にコミュニケーションを図ることの楽しさや大切さを実際に体験できるように。 その他、児童生徒の発言や作文等の内容に対して助言したり、児童生徒との会話テストを行う際の相手役を行ったり、授業が実際のコミュニケーションの場面になるように英語指導助手を活用しております。

第7問目 教員や英語を母国語とする英語指導助手の力を高めるための取り組みについては。
教員については、大学教員等から外国語活動・外国語科の指導に関する専門的な知識・技能を学ぶ研修会や、英語指導助手を活用した模範的な授業を参観したり、研修会を実施しております。また、外国語活動・外国語科研究委員会で作成した教材・指導資料等を活用したり、直接教員に指導をしたりしています。英語指導助手のうち直接雇用の者については、教育センターにおいて,毎月1回、研修会を実施、業務委託の助手については受注業者において資質向上を図っております加えて、指導主事等が全市立学校に英語教育推進訪問を実施参観し、指導助言を行っております。

第8問目として、本市で地域に誇りと愛着を持つ教育にはどのように取り組んでいるか伺いたい。
ふるさと学習として、全市立中学校で総合的な学習の時間を中心に各地域をフィールドとして、地域の魅力を広く深く知る活動や地域と協働して行う活動等の探究的な学びに取り組んでいます

第9問目 さいたま市では、「グローバル・スタディ」という独自の英語教育を推進して教育効果をあげていますが、小1から中3まで一貫した教科で、単なる語学学習に留まらず、よりグローバルな視点を持った生徒を育成しています。自国の文化を発信したりする能力を社会や他の科目と総合的に学ぶといったもので、テキストも英語科の先生がみんなで作っています。中学3年生でCEFR-A1レベルの生徒が86.6%に達するということで、川越市の54.5%と比べると大幅に高い達成率になっており、全国の他の自治体からの視察も多く、4市が導入に向けて検討をしています。川越市とも「グローバルスタディ」は親和性が高いと思いますが、本市の考えは。また、
「さいたま市」が、「グローバルスタディ」に取り組むことで、生徒の英語力向上に成果をあげていることについては承知しております。本市としては、授業時間数の確保など、導入するには課題があると考えておりますが、地域の魅力を英語で発信していく力を育成することにおいて、参考となる点があるものと捉えております。

第10問目 他市にも参考になる先進的な取り組みがあれば、伺いたい。
現在、県内で熊谷市や川口市が全市立中学校が導入している「ラウンドシステム」は、教科書の全単元のストーリーを年間で4〜5巡繰り返し活用し、生徒がコミュニケーション中心の活動に取り組むことで「聞く」「読む」「話す」「書く」ことの英語4技能の使用量が増えることに伴い、英語力を伸ばす生徒が多くいることが特徴であるとされております。他市の英語教育の指導方法や効果等について調査研究しつつ、本市の実態に合った英語教育の構築に向けて進めていきます.

第11問目 市立川越高等学校の英語教育における国際交流について取り組み状況は。
市立川越高等学校では、英語宿泊研修として希望者を募り、福島県天永村にあるブリティッシュヒルズにおいて、オールイングリッシュの2泊3日で研修を実施しています。70種類以上の研修講座から英語の体験活動を行い英語によるコミュニケーションを学んでおります。姉妹友好都市のノースセーレム高校との間で1年ごとに相互訪問、今年度は8名の生徒が参加しました。

第12問目 本市における青少年の英語交流はどのようか。及び効果についても伺いたい。
本市の海外姉妹都市であるアメリカのセーレム市とドイツのオッフェンバッハ市に、毎年交互に中学生を派遣する「海外姉妹都市訪問川越市中学生交流団』事業を実施。現地に滞在する1週間は、全泊ホームステイで、ホストファミリーとの会話は主に英語となります。そのため、本事業の事前研修では、地元の方々と積極的にコミュニケーションをとることができるように、本市の基本的情報や文化についても、改めて学ぶ機会をもうけています。
昭和62年の開始以来、30年以上継続して実施しており、これまでに500名を超える中学生が海外姉妹都市交流を経験してきました。令和2年度、派遣生440名を対象に実施した追跡アンケート調査では、84%の派遣生が「派遣事業での経験が、その後の生活や就職・進路の選択等に影響を与えた」と回答しています。これら派遣生をパネリストに迎え、令和3年度に「中学生シンポジウム2021globalな未来へ羽ばたく君へ」、令和4年度には「市政施行100周年記念シンポジウム」を開催し、現在グローバルに活躍する派遣生たちの体験談や、将来のキャリア形成や多文化共生の大切さについて意見を交換を行いました。これらかの取り組みが評価され、「自治体国際交流表彰(総務大臣賞)」を埼玉県下で初めて受賞しました。

13問目 川越や日本文化歴史を英語で発信することができる人材育成の取り組みについては。
小江戸川越観光親善大使である「NPO法人英語の通じる街実行委員会」が主体となり、「第4期川越市英語ボランテイアガイド育成講座」と題して広報等を通、参加者を募ったうえで、16名の方が参加されました。今年の夏から秋にかけて行われた全14回の講義には、座学と実地の研修が組み込まれ、実地の研修の際には観光所管施設の使用や、外国人観光客が数多く訪れる川越まつりでは、その成果を発揮させるべく川越駅、本川越駅の校内に設置された臨時案内所において英語による案内の場の提供など、様々に人材育成の係る取り組みを支援しています(観光課)

14 問目 広い視野や国際感覚を持ち、地域の誇りや自分の思いを発信していける児童生徒の育成は
本市においても、今までよりも多くの外国人が訪れ、外国語を用いて他者とコミュニケーションを図る資質・能力を育成することは、ますます重要になってるものと考えられる中、小・中・高等学校の外国語活動・外国語科の教職員の指導力を向上させ、各学校段階の学びを円滑に接続できるようにし、英語力を系統的に育成していくとともに、児童生徒が、英語を学ぶ楽しさや意義を感じられるような授業となるよう、工夫と改善を図ってまいります。
また、児童生徒が、ふるさと川越への愛着や誇りをもち、地域に貢献しようとする心を育むために、今後も川越市ふるさと学習を一層推進するとともに、さらには、地域人材の活用や姉妹都市交流など海外の学校と連携することで、児童生徒が広い視野から国際理解を深め、川越の魅力を積極的に発信できるような機会の充実を図って参ります。

まとめ
「ふるさと学習」と「英語力の向上」を組み合わせて取り組む、川越らしい特色ある教育、つまり、川越の魅力を発信できる英語教育の推進によって、小中学生や高校生さらに大学生それぞれのレベルで、自分の住んでいる地域についてより深く理解し、自分の住んでいる街に興味、関心が深まることで、地域の問題を自分自身の問題としてとらえられるようになり、地域の活性化にもつながるようになる取り組みができると素晴らしいと思います。
また、こうした小中高校生が大人になった際には、市や周辺の観光資源を海外に発信したり、さらにはインバウンド観光を促進する人材となったりして、地域社会へ貢献することも可能性も考えられます。
小学校、中学校での学びの上に、高校との連携で、体系的に地域の魅力、文化、歴史などを学ぶグローカルな英語教育を推進することができたら観光立国を支える人材の裾野を拡げることにもなります。そうした高校レベルで、川越の魅力を発信できる「観光教育」などの創設や、更なる取り組みも提案したいと思います。
また霞が関地区など、多くの国からのたくさんの留学生がいる大学を有する地区でも、外国人留学生が地域の方々とふれあうことで、地域に魅了を感じ、卒業後も住みたい、また戻ってきたいと思えるようなご縁を増やせれば、また彼らの生活文化を発信できる場所が川越に増えれば、川越を多彩な国際交流、異文化交流ができる街として位置付けられるようになるでしょう。外国語教育の可能性だけでなく、街そのものの新たな魅了を創出してゆくことにもなると思います。
川越市でも、学校と地域住民等が力を合わせて学校の運営に取り組むことが可能となる、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)がはじまっています。学校運営に地域の特色ある取り組みを積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていく中で、こういった活動ができたらと思います。地域や民間団体と小、中、高等学校が連携した地域活性化につながる国際交流を進めていけることが望ましいと思います。