大伴家持の歌日誌を収めた第18巻には、次のような歌があります。
縦にも横にも やっとこさ
ご主人様の下僕でござる
カニように 生きるのさ
作者は大伴池主です。大伴家持は、国守(県知事)として越中へと
赴任するのですが、そこには大伴の一門の旧知の大伴池主が国掾(じょう)
として任務についていました。国司の三等官、県庁なら総務部長クラスというところです。
時は、藤原中麻呂が台頭してくる頃で、名門大伴家を守っていくという
強い意志を二人は共有、歌ともだちとして交流していました。
後に、橘奈良麿による藤原仲麻呂打倒の乱に、池主は加わわるのですが、
このことが事前に発覚し、姿を消してしまい、これ以降、大伴家は衰えてゆきます。
それはさておき、ユーモラスなコトバ遊びが楽しめます。
縦さにも カニも横さも やっとこそ 我はありける 主の殿戸に
4132たたさにも かにもよこさも やっとこそ あれはありける ぬしのとのどに
「たてにもよこにも、ともかく私は下僕としてあったことだった。御主人であるあなたの御門にて。」