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中央公民館分室の有効活用
中央公民館分室の有効活用
9月議会が終わり、私にとって6回目の議会で6回目の一般質問ですが、テーマは「中央公民館分室の有効活用」についてです。
中央公民館分室(六軒町2丁目15番地1)は川越の貴重な歴史的建造物です。深い思い出や愛着を持つ市民も少なくありません。そこで、歴史文化を生かした遊休施設の有効活用という観点から、中央公民館分室の官民連携による有効活用、歴史文化を生かした利活用を検討できないか、一般質問いたしました。
元々は中央公民館分室の建物は、東京三田に久松定謨(ひさまつ さだこと)伯爵邸として建てられた建物です。久松定謨氏は、かつて松山藩主であった久松家当主で、長く陸軍武官としてフランスに駐在、そのせいかハイカラ趣味で、大正時代、松山城の麓に萬翠荘(ばんすいそう)という鉄筋コンクリート造りのフランス風洋館を別邸として建設した人物です。この萬翠荘は、現在、国の重要文化財になっています。
ちなみに久松家は久松松平家といい、藩祖久松定勝の母は徳川家康の母、於大の方。つまり、定勝と家康は異父兄弟。川越市は徳川家康とゆかりが深く、この分室は、本丸御殿や喜多院などの歴史文化と強いつながりがあります。
その久松定謨伯爵の東京三田の本宅を、小泉八雲別名、ラフカディオ・ハーンの長男の小泉一雄氏が昭和3年に三橋村(大宮市)へ移し、その後、昭和14年に「山吉」で知られる山田屋の屋号を持つ呉服太物商の渡辺吉右衛門氏によって、川越に移築されたという由緒のある建物です。
埼玉県内初のデパート建築、一番街にある「山吉ビル」(現在は保刈歯科醫院が入っている)との関わりも含め、川越の物資集散と商業都市川越の発展にみる歴史的風致の観点からも貴重であることから、中央公民館分室は、様々な可能性を大いに持つ施設と言えます。
南側には素晴らしい庭園が配置されています。ふすまの引き手金具など見事な金工細工の松、竹 梅が彫られています。
さて、小泉八雲であるラフカディオ・ハーンは1850年生まれ。ギリシャのイオニア諸島レフカス島に生まれました。父はアイルランド出身で、イギリス軍の軍医。母はマルタ島生まれで、アラブの血も混じっていたと伝えられるギリシャ人。やがて、ニューオーリンズに移住、この地はラフカディオ・ハーンにとって重要な都市、各国、各地域の文化が混血しあうこの街で10年間を過ごしました。
万国博覧会が開催された折、日本に関心を持つようになり『古事記』を読んで日本に。松江でセツに会い、結婚。セツとの出会いは決定的で、日本に永住、故郷を
持ったのです。やがて子供が生まれ、ハーンは帰化、小泉八雲となり、自然と共存する人間の姿など日本を愛し、『怪談』など日本の怪談の本を多く書いて世界に発信しました。
小泉八雲の長男、一雄氏は文筆家で、一雄氏の長男、小泉時氏の著書『ヘルンと私』の中には、まさにこの中央公民館分室の建物の部屋の写真があり、そこに小泉八雲が実際執筆に使用していた机が掲載されています。
この分室の建物の保存は、同時代に建築された保岡勝也設計の旧川越貯蓄銀行や第八十五銀行本店、旧山崎別邸、山吉ビルと
いった歴史的建物との繋がりを浮き彫りにすることになります。
これらの建物は、川越が商業都市として発展した時代を象徴するものであり、中央公民館分室もその一部として位置づけられます。したがって、この建物を保存することは、川越の歴史的景観と文化的遺産を一体的に守り、地域の歴史を次世代に伝える重要な役割を果たすことになります。
渡辺吉右衛門氏は保岡勝也設計の山吉ビルを建てていますが、旧山崎家別邸のような建物も別邸としてつくることは出来たはずです。しかしこの建物を移築しています。それは、この建物への特別な愛着があったのではないかと感じられます。
以上、川越を語る上で重要な豪商たちに関わるこれらの建物は、今後、セットで伝えて行くことが重要であると考えられます。
質問:中央公民館分室の開館から休館までの経緯は?どのように活用されていたのか伺いたい。
答:昭和58年3月に土地建物を市が買収し、同年7月から中央公民館分室として開館し、約35年間、主に公民館の貸室として活用しました。平成30年に、シロアリによる浸食がみられるなど老朽化が著しい状況であったため簡易耐震診断を実施したところ、倒壊する可能性が高いとの診断結果となり、安全性が確保できないことから、平成31年4月から休館して現在に至っています。開館中は主に囲碁や詩吟、舞踊、ヨガ等や公民館講座に利用され、休館前の3年間で言えば毎年約14,000人が利用しました。
質問:分室の維持管理費用は?
答:主に受付業務の委託料で、年間平均で約440万円程。休館後の維持管理費は、植栽管理や簡易清掃で年間約60万円程度です。
質問:分室の耐震診断の結果は?また、改修にかかる費用は?
答:平成30年に簡易耐震診断をしたところ、大地震の際に「倒壊する可能性が高い」という診断でした。
その後の令和元年に、伝統耐震診断やシロアリ診断について詳細な診断を行い、伝統耐震性評価指数C値で総合的に「やや危険」との診断がなされ、また、シロアリ診断では防蟻処理については、相当な時間と費用を要するとの結果でした。
次に改修の費用について、古民家鑑定の観点からは、6段階評価の上から3段目の「コストがかかるが再生可能」となっています。類似事例から防蟻処理と耐震改修費用として1億円を超えると想定しています。
提案:回遊ルート「豪商の道すじ」としての活用
しかし、改修に関しては、民間の専門家にお聞きすると、かなり費用を抑え耐震改修を行うことも民間では可能なようです。
分室の維持管理にも費用がかかりますが、植栽管理や簡易清掃管理もふくめて、運営を民間と連携して行うことで、建物を生かしながら効率的、効果的な運営ができるのではないでしょうか。
今年、総額1億1,991万8,000円の予算で行われる観光庁のオーバーツーリズム対策事業の中で、回遊性を高めるための「多様な観光拠点への誘客促進」に1,000万円が計上されています。
その際にも対象とする観光拠点について、中心市街地周辺地域及び川越城本丸御殿地域、郊外では伊佐沼周辺地域を中心に考えているようですが、いま利用されていない遊休施設にも目を向けることができるといいと思います。つまり、回遊案として「豪商の道すじルート」などというものを作り、丹徳庭園、山崎別邸などと東西につなぐことで、南北の蔵の街の通りのオーバーツーリズムという課題の解決にもつながってゆくのではないかと思います。
そのためには、小泉八雲ですが、例えば、現在、松江、焼津等に小泉八雲記念館があるのですが、川越にも小泉八雲記念館なども作りうるわけです。そうなれば、来年後期のNHK朝ドラ「ばけばけ」の主人公が小泉八雲の妻「セツ」がモデルだそうですので、全国から人をよび込み、宿泊型観光を促進する良いきっかけになるのではと思います。
さらに言えば、持続可能な観光のための観光のグランドデザインとして、また、オーバーツーリズム解消のための回遊ルートの一つとして、「豪商の道筋ルート」や分室の利活用についてどう考えるのでしょうか。
質問:中央公民館分室付近は今も歴史的建造物は残っているが、このエリアを回遊できる観光ルートとして活用することについて、市はどのように考えているのか
答:このあたりには、中央公民館分室のほか、飲食店として活用されており、国登録有形文化財でもある旧六軒町郵便局や、明治初期に建築され、体験や宿泊施設等として活用されている丹徳庭園等の貴重な建造物が所在しており、これらの建築の経緯や魅力を充実させることによって、こうした施設に興味を持っていただける可能性があり、また、例えば、川越駅に向かう際の立ち寄りとしてルートを設定し、ご案内することにより、一番街周辺部に集中している観光客の分散化や滞在時間の延伸につながることが期待されるところです。
さらに、分室においては、「観光客の居場所」と「地域住民の居場所」両面を持つ場としての活用ができるのではと思います。地元と触れ合える場としても、公民館の場所の不足からもふさわしい場所になると思います。
ニッポニアが山梨県小菅村で行っている「さとゆめ」では、観光客と地元の人が交流する場、相互理解の場を作り出しています。私ごととして地元の人が観光に関われるそのような場所は川越にも必要と思われます。そんな中から川越に住んで良かったというシビックプライド、すなわち市民の誇りの醸成にもつながります。また子供達が歴史や伝統文化を知り、体験する場にもなります。
観光の視点から言えば、「食べ歩き」観光から「ふれあう」観光への転換を図るため,体験・学習型コンテンツの充実など川越の文化や知恵,匠の技を心で“みる”観光を進める。また,地元の人びととのふれあいが魅力的な観光資源であることを踏まえ、観光客が川越の日常生活を体験できる取組を推進できたら素晴らしいと思います。
市民が子どもから大人まで川越の魅力を知り、楽しむ取り組みを広げながら、地域の人々が、観光客を温かく迎え、観光の新たな主体として存在感を発揮する都市を目指す、そのような市民と観光客の触れ合える場ができたら素晴らしいと思います。
提案:官民連携で事業運営する
さて、移築してから80年の時間が経っております分室につきましては、公民館としての再生や文化財的活用をせず、市長部局を含めて利活用の可能性を探る、さらに、旧勤労会館跡地と合わせた利活用も含めてという方向性のお話を伺いましたが、まちなかの中央通りに近い便利な場所にあるということで、土地そのものの価値ばかりに重きが置かれてしまい、建物そのものの歴史的文化的価値は議論されず、価値についての情報が共有されず、売却など検討されることになったらまことに残念なことです。
そこで、中央公民館分室を今後どのようにするのか、観光利用としての可能性などがあるなか、市の遊休施設の管理活用手法としてどのようなものがあるので
しょうか
他の都市を例にとれば、一つは市の保有財産を公募型プロポーザル方式で民間事業者に売却する方法です。新潟市の旧会津八一記念館の場合、これは会津八一の偉業を伝え資料を保存する会館ですが、耐震強度不足や保存環境の問題から移転閉館することになりました。その際、民間事業者の企画力、資金力、ノウハウを活用し、外観を維持、建物を壊すことなく、耐震化をし、市民が利用可能なスペースの設置等を条件に公募する手法をとっています。
また、民間の総意工夫に富んだ発想を生かした提案による公募型プロポーザル方式もあります。市が保有したまま民間事業者に貸し付ける方法です。貸付は現状のまま、なお建物については、内装・外装の変更や新たな建物を建築することも認められたりもします。古民家の再生などによく使われる手法です。例えば、鎌倉の例ですが、旧村上邸の保存と活用に使われた手法で、市が保有したまま定期賃貸借契約を結ぶ方法です。旧村上邸は、東御門にある広い敷地と雰囲気のある竹垣や門などを持つ鎌倉の典型的なお屋敷ですが、鎌倉市に遺贈された建物です。その後、このプロポーザル方式で民間事業者と定期賃貸借契約を結び、保存活用されています。
提案:エリア価値向上を視野に
いわゆるスモールコンセッションとは、自治体が取得・保有する空き家や遊休公的不動産といった比較的小規模な施設の所有権を自治体などが持ったまま、リノベーションや賃貸、管理などの運営全般を民間事業者に委ね、官民連携で地域を活性化する
手法です。自治体にとっては住民
サービスの向上や維持管理費の削減が、民間事業者にとっては事業機会の拡大や地域への貢献といった効果が期待できます。地域の中小企業も運営に携われることで「エリア価値」の向上につなげる仕組みです。閉鎖された校舎の教室のスペースを小規模事業者に提供して地域活性化を図ったり、空き家を利活用して宿泊施設にしたりするだけでなく、地域やそこで暮らす住民との交流ができるような仕組みです。
さて、先ほどの小泉八雲のひ孫にあたる小泉凡さんは八雲を文化資源として現代に生かす活動をしており、2008年からNPO法人松江ツーリズム研究会を行っているのですが、八雲が書き記した怪談の地を巡る「松江ゴーストツアー」を行っています。きっかけは、八雲が育ったアイルランドの首都ダブリンを訪れた際、「ダブリン・ゴーストツアー」に参加したことでした。アイルランドには怪談や妖精の話が残っていますが、アイルランドは、それらを無形文化遺産として活用しています。
もともと松江は城下町なので、築城伝説をはじめとした怪談がありましたが、怪談が町の資源だとは、そのときは誰も気が付いていなかったそうです。ゴーストツアーの地元の語り部の育成にも力を入れているそうです。これは同じく城下町である川越でもできそうです。
民間団体の例では、NPO法人蔵の会では川越の貴重な建物を保存・利活用を提案してゆく目的で、「中央公民館分室の今後を考える会」を発足させ継続的に分室活用についてのトークセッションやワークショップを開催しています。
公民館分室に関わってきた方々のお話を聞き、また市民から分室の利活用について様々なアイデアを募集しました。また分室を利用していた団体や周辺自治会のお話を伺い、どのような利用が望ましいのか広く意見を聞き、検討することや、建物だけでなく周りの地域の状況も踏まえ、地域全体が活性化できるような利用方法を考えていくこと、さらには、建物の保存のみではなく、資金面での方法も考え、積極的に提案や協力を模索しているようです。
このように、歴史的建造物を官民連携で事業運営することは、市にとって管理負担を減らすことにつながります。
さて、令和6年3月、川越市公共施設・インフラ施設複合化に関する市民アンケート調査が行われました。それによれば、「公民館×図書館」「図書館×美術館・博物館」「公民館×集会施設」「ホール施設×集会施設」「美術館・博物館×観光関連施設」など複合化したら良い組み合わせの可能性について市民は高い関心を持っています。
そこで、この分室についても「小泉八雲記念館×集会施設×観光関連施設」というような形での再生も視野に入れるべきです。
質問:公共施設の老朽化の現状と課題について伺いたい
答:多くの施設で老朽化が進行しています。老朽化が進む公共施設について、市民の皆様や職員が安全に利用できるよう適切な維持管理を努めるとともに、機能維持のためには、建築から20年や40年の節目には、一定程度規模の改修も行っていく必要があります。一方で、限られた財源で、効果的、効率的に施設サービスを提供するためには、更新時期を迎えた公共施設について適切な規模や適切な配置等の検討とともに、施設の統廃合等の検討も併せて進める必要があると考えています。
質問:老朽化している市の施設の今後の維持管理方法について、公共施設の官民連携による有効活用について市の考えを伺いたい。
答:厳しい財政状況の中、公共施設を安全に維持管理し、また、有効活用を図っていくためには、民間事業者のノウハウを活用した管理・運営手法を導入する事も有効な手段の一つと考えています。行政が担うべき役割を整理した上で、、効果的なサービスの提供が見込まれる場合につきましては、積極的に民間事業者との連携を図っていく必要があると考えています。
質問:歴史的建造物としての価値を生かした中央公民館の利活用について、民間の資金やアイデアを活用した維持管理方法について、市の考えを伺いたい。
答:分室の建物の再生、維持管理には多額の費用がかかり、これを市が自力で行うには多くの課題があります。一方で、立地や旧勤労会館跡地を含めた土地の面積や形状を鑑みると価値の高い財産と考えられます。分室の利活用をする場合には、民間の資金やアイデアを活用する手法は選択肢の一つとして様々な可能性を探ってまいりたいと考えています。
部活動の地域移行・地域連携についてお聞きしました (文化教育常任委員会)
質問:地域移行・地域連携のメリット、デメリット、現在の進捗状況は?教育委員会と文化スポーツ部でどんな役割をそれぞれ担って移行するのでしょうか。
答:教育委員会では、まず部活動の地域連携に重点を置いて進めています。、少子化等に伴い、部活動の活動がままならなくなってしまうことを防ぐために、合同部活動や指導者の派遣などの取組を進めているところです。令和五年度に市立中学校六校に八名を配置いたしました部活動指導員は、5月1日付で9校に13名を配置しています。
答:文化スポーツ部では、昨年8月に文化団体、スポーツ団体に受入れ状況のアンケート調査を実施し、今年度連携協定を締結している市内の4つの大学を訪問して、協力要請を行っています。
質問:今までの部活動指導員はどのような報酬や仕事の形態だったのでしょうか。
答:教育指導課で所管をしております部活動指導員につきましては、現在、報酬は4,512円という形で規定で、会計年度任用職員という形で位置づけをさせていただいています。
質問:指導者の質を担保するような、ライセンスのような仕組みについては考えはありますか。
答:資格等につきましても、他市町村、県や国の動向等も踏まえながら検討はしていきたいです。指導員の質の担保については、研修会や任用の際の面接等に力を入れていきたいと考えております。
質問:基金への寄附を民間の方々と一緒につくっていくような仕組みについてはいかがでしょう。
答:部活動地域連携・地域移行は、長期的な取組になるのが予想されます。補助金等も含め、慎重に審議を進めていきたいです。
質問:部活動にも様々な種類がありますが、生徒、児童が自分たちで発案するような部活動はいかがでしょうか。これからの部活動を生徒や児童と一緒に考えていくという考えもありますか。
答:今回の部活動の地域連携・地域移行の目指す姿は、子供たちがスポーツや文化に親しむ環境を持続可能な形にしていくことが一番の重要なポイントだと思っています。御提示につきましても、他の市町村ですとか県や国の動向を踏まえながら検討していきたいと思っております。
質問:部活動への情熱を持つ先生もおられると思いますが、そうした先生方への対応は。
答:本市で進めておりますのは、休日の部活動の地域移行という大きな流れです。実際には部活動をやりたいという教職員もおりますので、教職員のそういった気持ちも大事にしながら進めて参ります。
質問:どうやって子供たちを地域の部活動に連れて行くのか。学校で行うことが前提になっているのか。また、コミュニティ・スクールや放課後子供教室など、学校での地域活動をどう整理していくのか。
答:場所の確保というのは大きな課題の一つです。現状、今、部活動が実施されております学校の活用というのは、やはり検討していく事項と思っております。そういった中に、指導者を派遣するというのも一つの方法かなと思っております。