石麻呂に 我もの申す 夏痩せに よしというものぞ 鰻とり食せ

万葉集第十六巻には、ナンセンスなこっけいな歌がたくさん登場します。
宴席の芸として読まれた戯れ歌の数々は、即興的に歌われたようです。
ナンセンスな脈絡のない歌をつくるには、むしろ相当な才能が必要だった
と思えるのです。

おーい、石麻呂

夏痩せにきくそうだから

うなぎを食べろよ(大伴家持)

まてよ、石麻呂

痩せていようが、生きていればいい

お前の痩せて軽い体で、うなぎをとろうと

川に流されてしまってもなあ(大伴家持)

 

痩せたる人を笑う歌二種(大伴家持)

石麻呂に 我もの申す 夏痩せに よしというものぞ 鰻とり食せ

いしまろに われものもうす なつやせに よしというものぞ むなぎとりめせ

痩す痩すも 生けらばあらむを はたやはた 鰻をとると 川に流るな

やすやすと いけらばあらむを はたやはた むなぎをとると かわにながるな

 

吉田老(きつたのおゆ)、通称、石麻呂は、体が痩せていて、

たくさん食べても飢餓の人のように見えました。そこで

大伴家持がこの歌を詠んでからかったのです。「石麻呂よ

、夏やせに効くそうだからウナギをお食べなさい。いや、

まて。痩せていても生きていればよいだろう。ともかく、

うなぎをとろうとして、川に流されてしまってもなあ」という歌です。

夏の土用の丑の日に今でもよく引用される有名な歌です。