令和万葉集:天の川 霧立ち上る 織女(たなばた)の 雲の衣の反る袖かも

古代、織物は神への最高の捧げものでした。

清らかな汚れのない巫女が織る機(はた)織物は、

生命力の象徴として子孫繁栄を願って、穀物とともに神に捧げられました。

古事記ではタクハタチジヒメノミコトという美しい女神が織物を司っています。

ギリシア神話の中では,国民的英雄ヘラクレスが赤子のとき,

女神ヘラの乳房を強く吸ったため乳がほとばしって天の川となったとされ、

天の川は、英語では「MILKY WAY」と訳されます。

月の女神さまのおっぱいでもある天の川に、巫女たちは恋の成就から生命誕生、

幸福な家族や子孫繁栄を願って機織りものを捧げたのです。

天の川 霧立ち上る 織女(たなばた)の 雲の衣の反る袖か

2063 あまのかわ きりたちのぼる たなばたの くものころもに かえるそでかも

「天の川に霧が立ち上がっている。織女の雲の衣のひるがえる袖なのかなあ」

天武天皇が、「少女(おとめ)ども 少女さびすも 唐玉(からたま)を

袂(たもと)にまきて 少女さびすも」と、吉野の宮で琴を弾いて歌うと、

天女がこの五節舞(ごせちのまい)の歌を歌いながら、

雲とともに、袖を5回翻して舞ったという伝説があります。

 

冒頭の万葉歌ではそんな天女に織女を重ねた歌です。

雲を天女の衣に見立て、霧を袖と見立てています。