令和万葉集:筑波嶺の 新桑繭の 衣はあれど 君が御衣し あやに着欲しも

筑波嶺の 新桑繭の 衣はあれど 君が御衣し あやに着欲しも

3350つくばねの にひぐはまよの きぬはあれど きみがみけしし あやにきほしも

 

筑波嶺一帯の、新しく出た桑の葉で育った蚕からとれる質の

良い糸で織った上等の衣もすばらしいにはちがいないが、

それよりも、あなたの着たその衣こそ無性に着てみたい

 

蚕には春蚕と夏蚕があるですが、新桑繭とは、春蚕、

つまり春に新しく芽生えた桑の葉を食べて育った蚕が

つくる繭で、夏蚕よりはるかに上等、最高の衣ができる

とされました。そんな上等の衣もあるのですが、あなたの

衣が着たいとは、相手の衣を敷いて共寝する、つまり愛を

受けたいという女性の歌で、新婚の儀式の歌だったとも

考えられています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、筑波嶺一帯では養蚕が既に盛んに行なわれていて、

絹を税として納めていた当時の生活様式がよくわかる歌です。

常陸の国の歌です。

 

筑波嶺に 雪かも降らる 否をかも 愛しき子ろが 布干さるかも 3351

つくばねに ゆきかもふらる いなをかも いとしきころが にのほさるかも

 

筑波嶺一帯に雪が降っているのかな、

いや違うのかな、

いとしいあの子が布を干しているのかなあ

 

筑波山一帯に雪が降ったのかなあと思われるほど白布が干してある、

そういった美しい光景を見て感動して詠んだ歌で、

布の生産を言祝ぎ、布の多産を祈る歌です。