令和万葉集:万葉人が信じていた、ユニークな恋のジンクス

万葉人が信じていた、ユニークな恋のジンクスを

ご紹介しましょう。

何だか眉がむずがゆい、くしゃみがでそうなのは、

現代人なら風邪や花粉症のせいだと思ってしまうで

しょうが、万葉人は恋人に逢える兆候だと思っていました。

衣服の紐が自然にほどけるのも、また相手が自分を

思ってくれている印だったのです。

(男の歌)


眉根痒き 鼻ひ紐解け 待てりやも いつも見むかと 恋ひ来し我を

「眉を掻いて、くしゃみをして紐をほどいて待っていてくれたんですか。

あなたのことのことばかり思っている僕のことを」

(女の歌)

今日なれば 鼻ひ鼻ひし 眉痒み 思ひしことは 君にしありけり

2809「たしかに今日はクシャミも出るし、眉も痒くてたまらなかったわ、

それはあなたのせいだったのね。」

この2首の男女の恋のやりとりは、柿本人麻呂歌集として2408番に載る

類歌を用いたものです。

 

くしゃみをするのは人が自分を思う兆し、というジンクスに基づき歌った和歌をもう一首。

うちはなひ 鼻をぞひつる 剣大刀 身に添う妹し 思ひけらしも 2637「くしゃんと、くしゃみをした。腰に帯びる剣の太刀のように、いつも我が身に寄り添う妻が、今僕のことを思っているらしいよ。」

相手が自分のことを思ってくれているか、今夜はきてくれるのか、恋は不安で、つらくて、切なくて。そんな気持ちは今も昔も変わらないですね。