万葉カップルの恋のやりとりは、情熱的で、ウイットに富んで、
ユーモアにあふれ、時にはドスがきいて…ま
ずは、若き日の大伴家持と紀女郎(きのいらつめ)の恋の駆け引き
をご紹介しましょう。紀女郎は、たわむれに家持を「しもべ」と
いう意味の「戯奴(わけ)」と呼んでいます。家持もその芝居に
楽しくのっかっています。
戯奴(わけ)がため 我が手も須磨に 春の野に 抜ける茅花を をして肥えませ
1460「家持君のために 一生懸命引き抜いて来た茅花よ。
どうぞ召し上がって 太って(もっと健康になって)くださいな。」(紀女郎)
我が君に 戯奴は肥ふらし 賜り(たばり)足る 茅花を食めど
いら痩せに痩す
1461「我がご主人に 私めが恋焦がれているからでしょうか。い
ただいた茅花を食べましたが太るどころかやせる一方です。」(大伴家持)
太る痩せるは現代のように古代も人々の関心のある話題のようですが、
当時は痩せている方が問題だったようです。