令和万葉集:百年に 老舌出でて よよむとも 吾がいとはじ 戀はますとも

三十代の紀女郎と二十代の若き大伴家持、かなり年の差の

あるカップルでした。しかも女性の方が十歳も年上ということを

気にしていたようでもあります。

 

百年に 老舌出でて よよむとも 吾がいとはじ 戀はますとも

ももとせに おいじだいでて よよむとも われはいとはじ こいはますとも

「あなたが百歳になって 舌を垂らしたよぼよぼのおばあさんになっても

嫌になんかならないよ。戀の思いが増すことはあっても。」(大伴家持)

 

 

 

まだ若い家持が、退廃的なデカダンスの香りを漂わせた歌を

おくります。おまえ百までわしゃ九十九まで、官能的にともに

命はてるまで、愛し合いましょうと言っている家持ですが、

いろいろな女性に目うつりしつつも、関係は続きます。が、

結局はまた坂上大嬢と結ばれたりするわけですから、

紀女郎にそんなに逢えるわけでもありません。

 

言出しは 誰が言にあるか 小山田の 苗代水の 中よどにして

776ことでしは たがことにあるか をやまだの なはしろみずの なかよどにして

「あなたが先に言い出したんじゃないの。それなのに

山田の苗代の水のように途中で淀んだりするなんて!」(紀女郎)