令和万葉集:家にありし櫃に鍵さし おさめてし 恋の奴のつかみかかりて

恋多き、万葉女性、大伴坂上郎女の人生、特に前半生は

ドラマチックでした。10代で結婚しましたが、お相手の

例の穂積皇子。モテる穂積親王でしたが、すでに40歳を

こえてさすがに歳を感じながら、大伴坂上郎女を寵愛します。

そんな和歌が宴会の余興で歌ったものとして残されています。

 

家にありし櫃に鍵さし おさめてし 恋の奴のつかみかかりて(穂積皇子)

3816いへにありし ひつにかぎさし おさめてし こいのやっこの つかみかかりて

「家にある櫃に鍵をかけて ちゃんとしまいこんでおいたはずなのに、

あの恋の奴めが、しつこくまたまたつかみかかりおって…。」

 

しかし、郎女と結婚して1年で、穂積皇子は亡くなってしまいます。

郎女は、実家の近くの坂上の地に移り住みました。

しばらくして藤原不比等の四男である藤原麻呂の恋人となります。

藤原麻呂は左右京大夫 (現在の知事) 忙しい仕事の合間をぬって、

夜になると坂上の屋敷を訪れたましたが、麻呂の足が遠のくとともに、

二人の関係も自然に解消されてしまいました。

 

来むといふも 来ぬ時あるを 来じといふを 来むとは待たじ 来じといふものを527

こむというも こぬときあるを こじといふを こむとはまたじ こじというものを

「来るといっても来ないんだから、来ないといったら来るのかしら。

でも、あてにはしないわ。だってあなたは来ないと言ったのだから」

(続く)