万葉女子は恋の達人。
恋多き万葉歌人、坂上郎女のストーリーの続きです。
その後、坂上郎女は年老いた異母兄の大伴駿河麻呂に嫁ぎます。
駿河麻呂との間に生まれたふたりの娘、坂上大嬢と二嬢の娘二人は
坂上の屋敷で育ちました。父の田村の家には母の違う姉妹が暮らしていて、
異母姉妹が会う機会は少なかったのですが、暖かな交流は続いたようです。
大伴駿河麻呂が亡くなった後も坂上郎女は多くの男たちと愛の和歌の
やりとりをしました。万葉集には、そんな郎女が折々に歌った恋の歌があります。
われのみぞ 君には恋ふる わが背子が 恋ふとふことは 言の慰ぞ 656
「恋をしているのは私だけ。あなたは言葉だけでしょ。」
恋ひ恋ひて 逢えるときだに 愛しき 言尽くしてよ 長くと思うはば661
「逢いたくて逢いたくてやと逢えたこの時だけでも、
優しいことばをちゃんと聞かせてよ。この恋を長く続けようと思うなら。」