第4章 スウェーデンの地方自治体と男女平等のとりくみ、市民と自治体の連携(女性の眼から見たスウェーデンの市民社会④)

スウェーデンの地方自治体では、長期的に自分の専門分野に取り組む事ができるます。また、プロジェクトごとに市民との相談、対話がおこなわれ、情報公開も徹底して、開かれた市役所であることが大きな特徴でともいえます。

スウェーデンの市役所と男女平等政策

ウプサラ市の例*スウェーデンの地方自治体での男女平等のとりくみについて、12000人の職員に男女平等政策を浸透させている職員を対象に、プロジェクトごとに対話がおこなわれ、長期的な取組みがなされている開かれた役所と職員の働き方を取材しました。

ウプサラ市は、12000人の職員がおりそれぞれ専門があり、その専門分野で働くシステムで、日本の公務員のように短い期間で仕事が変わることはありません。男女平等についても歴史が古く、行政内部で推進すれば外部も自動的に変化するという考えでしたが、そうならないことにスウェーデン政府が気づき、2007年から予算をくみ、総額2億クローネの資金を各自治体や県に提供しました。

長期的に自分の専門分野に取り組むスウェーデンの地方自治体職員

取材に応じてくださったエマさんは、もともと大学で人材学を勉強、その中に男女平等を研究し、仕事をしながら、職業訓練などを受けてさらに専門を磨きました。市役所では10年間働き、始めは社会保険の仕事、後半5年は男女平等を担当して,幼稚園、保育、学校など市の提供するサービスに男女平等の視点をいれる仕事を主としています。

ウプサラ市も2009年から男女平等統合化にとりくみました。今までの取り組みは短期で、プロジェクトが終わるともとにもどってしまうという反省があり、ひとつが終わると次に結果を学びながら引き継ぐというもかたちの4年間で4つのパイロット事業をおこないました。

若者のための余暇施設は、市内20箇所位ありますが、若者が、学校が終わってからの夜と週末を過ごし、自治体の職員が常駐する余暇施設ですが、かつて利用者の75%は男子でした。女子の利用を増やすことが課題ですが、それには自治体の70人の余暇施設職員の意識改革も必要でした。

余暇施設の、女子の利用の少ない理由を調査したところ、女子の好きな活動が少ない、職員の態度が乱暴であるなどの実情がわかってきました。そこで、女子の専用の時間づくりなどが必要なのでは観点から、余暇施設職員との4年間の取り組みがはじまりました。

スウェーデンではおさめている税金に対して、対等にサービスを受ける権利があります。余暇施設自体が男子に向いているとしたら、女子に向いている施設を別につくるのか、予算をカットするのか。常に男女平等の視点を皆の意識におきながら対策を継続的にとるが必要です。

次の段階では、管理職500人全体に男女平等事業の意識改革が導入されました。全ての管理職が実施できるよう教育され、また常に結果が求められました。管理職の教育からはじまって2年かけて12000人全ての職員の意識改革を実行し、不平等なところを全て把握するというプロセスをたどりました。

さらに大学の研究者が男女平等の取り組みをフォローし、どのようなしくみをつくったらよいか模索します。また自治体が失敗したとりくみもフォローし、毎年プロジェクトの評価をして報告書を作成、その結果を行政に活かすようにしています。このように、研究者と行政が組んで、ふたつの別の世界が交流できる形が実現しました。

市民と自治体の連携

日本では自治体が計画をたて、部分的に審議会などの会議を開き、そこに学識経験者や、公募で集まった市民とともに会議を開きますが、こちらでは、研究者と連携し、市民と相談し対話することは法律によって決められています。

たとえば新しい計画、道路をつくる場合には、学校を会場にして市民を集め、公聴会など開くなど、さらには市民が文書で意見を提案したり、良い提案があればそれを計画に盛り込みむなど、役所と市民の交流も進んでいます。

(まとめ)日本の市役所が2年間など短い期間で担当者が変わってしまうのに比べ、スウェーデンの地方自治体では、長期的に自分の専門分野に取り組む事ができ、じっくり腰をおちつけて責任のある仕事ができそうだなと感じました。また、プロジェクトごとに市民との相談、対話がおこなわれ、情報公開も徹底して、開かれた市役所であることが大きな特徴でともいえます。外部の大學などの研究者との連携も進められたり、また失敗も共有されることで行政に活かされるのは素晴しいと思いました。

次章では、市議会におけるボランテイア議員とはどんなものか、女性議員の活躍をみてみましょう。