議会での質問内容を動画でご覧になりたい方は以下のリンクをご参照ください。
川越市議会 議会中継 – 発言内容
はじめに(質問にあたっての想い)
私小林のりこは、年4回開催される市議会で、主に、教育、文化芸術、観光、環境、地域づくりなど市民活動で長年取り組んできたテーマをもとに質問を行います。今回は観光と文化芸術に焦点を当てた質問です。
川越は観光客で賑わっていますが、食べ歩きと蔵の街への一極集中という問題があります。そこで文化・歴史・教育・芸術・まちづくりなどソフト面の魅力を観光資源化し、富裕層などさまざまな人々を対象に付加価値の高い滞在型・回遊型の観光によって「川越ファン」の増加を目指す質問です。
クレアモールを歩いてみると、川越八幡宮から喜多院、成田山へのルートへの分岐点となる重要なクレアパーク南側に観光標識が設置されていません。多くの観光客は、まっすぐ小江戸蔵里を通って大正ロマン通りに向かってしまいます。これでは一極集中が起こるのは当然です。
観光は川越市にとって重要な産業です。それでも3、4時間の食べ歩き中心では、観光収入も限られますが、回遊型、滞在型が増えれば市の収入の増加も見込めます。例えば、仮に700万人の観光客から、1人につき100円、川越市に収入が増えれば、年間7億円になります。
さて、観光客が多く押し寄せる一番街周辺道路では、歩きスマホ、歩行者の車道へのはみ出し、交通渋滞、ゴミのポイ捨てなど問題があるなかで、マナー啓発パトロールの実施、交通渋滞緩和策としては、郊外型無料駐車場等への警備誘導員配置と臨時駐車場の開放、観光投棄ごみ防止の観点からエコステーションの設置などを川越市では実施しています。
歩行者の道路へのはみ出しの危険性を少なくするため、行列をなくすために入り口で並ばない工夫が必要とされますが、観光課では、ゴールデンウィーク中、一番街
でのパトロールを商店街、交通課と合同で行っています。しかし、交通規制そのものは、商店街と地域住民で立場の違いもあり意見が分かれてしまうことからなかなか難しいようです。
パークアンドライドについては、本年3月、JAいるま野本店駐車場にて実証実験を実施、中心市街地の渋滞緩和策等について検証が行われ、一定の効果がありながらも、あぐれっしゅ川越駐車場に関しては、満車対策の他に国道254号バイパスから駐車場へ右折する車などが渋滞しないようにするなどの課題を抱えています。
住民の皆さんとの対話については、本年1月、第19回の一番街周辺21か所の自治会で構成される北部市街地自治会交通対策連絡協議会が開催されましたが、コロナもあり住民との対話がなかなか進んでいない状況です。
以上のように、川越市はさまざまな相矛盾する課題を抱えています。地域住民にとっても住みやすく、観光客にとっても快適で魅力的な小江戸川越を築くためには、観光課、交通政策課、環境部などが幅広く、横断的に連携し、庁内での合意形成が必要です。議会では合計14の質問を行いましたので、一部を抜粋してご紹介します。
『オーバーツーリズム問題解決のためのDeepな川越ファンを作る回遊型・滞在型観光の促進』
質問1: ゴールデンウィークにおける観光客増加の状況についてお伺いいたします。
回答1: 一番街周辺の観光客数は約131,800人であり、1日換算すると約14,600人でした。(産業観光部観光課)
質問2: 蔵の街に観光客が一極集中しないよう、私自身も、回遊箇所の音楽を作り、川越をめぐる楽しい仕掛けができたらと活動してまいりました。
長時間滞在の観光客を増加させる施策と回遊性を高める方策についてお伺いいたします。
回答2: 観光エリアを蔵造り、本丸御殿、喜多院、その他郊外の4つに区分し、魅力ある観光資源を発掘しています。
また、小江戸川越見どころ90観光コースや小江戸川越七福神めぐり、観光案内所スタッフが独自に作成した御朱印を押印できる神社仏閣を巡る散策コースなどの活用、さらにはアニメの舞台やドラマのロケ地など、早朝や夜の時間帯に訪れてみたいと感じられる観光スポットなどを選定しています。(産業観光部観光課)
質問3: 交通機関を利用して来られる方には、駅から回遊箇所へのわかりやすく楽しい案内があればと思います。
また、車の交通渋滞の緩和ですが、パークアンドライドなどの実験結果などを踏まえ、リアルタイムの駐車場空き状況や付近の空き駐車場情報などが重要かと思いますが、いかがでしょうか。
回答3: 観光客にエリア毎のリアルタイムの混雑情報等を提供することで、回遊しやすいエリアに誘導できるようなデジタル技術の活用について調査・研究してまいりたいと考えております。
基本的なデザインで統一しつつ、連続性を考慮し、わかりやすい情報提供や見やすい観光サインの整備に努めます。(産業観光部観光課)
――私も議員になる前の2015年、ウェスタ川越の開業時から、川越市提案事業として、川越文化コンシェルジュ講座を3年間で30回行い、30人の川越の専門家にお話を伺い、のべ2000人が参加されました。
質問4: 川越の歴史や文化的魅力を発信する今後の取り組みについてお尋ねいたします。川越にある文化財などは、もっと観光資源として活用することができたらと思います。
先日、川越市立博物館で寺田勝廣さんの大鎧復元展覧会が開催され、サムライ体験型イベントも含め、全国の歴女や刀剣女子に広報したら、すばらしい観光戦略にもなる可能性も秘めているかと思います。
回答4: 「蔵造りの町」というイメージに隠れがちな様々な時代の特徴を、博物館が所蔵する資料を活用してわかりやすく情報発信するなど、本市の魅力を継続して伝えることが重要と考えます。(市立博物館)
質問5: 人材面で川越市出身者だけでなく、川越にゆかりのあるアーティストやクリエーター、大学関係者など様々な専門家に関わっていただき、滞在型で付加価値のある観光が創出できたらと考えますが、人材資源の把握と活用の取組みはいかがでしょうか。
回答5: 「公益財団法人川越市施設管理公社」がアーティストバンクとして、本市にゆかりのある音楽、舞踊、伝統芸能、美術・工芸など、分野ごとの情報を登録、公開しております。
現在は76の個人・団体が登録されております。(文化芸術振興課)
質問6: 「観光⦆×⦆〇〇」という川越らしさを発揮できるような、観光との連携で行われるスポーツや文化イベントの取り組みはいかがでしょうか。
回答6: 「小江戸川越ハーフマラソン」は、毎年、全国から約1万人が川越水上公園をスタートするものです。蔵造りの町並みを通り、晴れた日には遠くに富士山を望みながら市北部の田園地帯を巡る設定でスポーツと本市の魅力を一度に楽しめます。
また、「マラソンランナー応援店マップ」を配布し、市内の観光に併せて飲食等を楽しんでいただける取り組みも行っております。
私も以前は「こえど地域づくりネットワーク」という地域づくり推進課との協働・提案事業でたくさんの素晴らしい市民活動を紹介してきました。市民と行政が協働で企画会議のようなものを行い、アイデアが広がり、活動の幅が広がることを期待しています。(文化スポーツ部)
市民の力を結集した情報発信について
質問7: 市内外への紙媒体以外での情報発信はどのように行っているのか、そのアクセス数や登録者数なども合わせてお伺いしたいと思います。
つまり、川越市のシティ・セールスの観点から、市内外にデジタルトランスフォーメーションを活用した広報はどのようなものがあるでしょうか。
城下街川越の歴史を感じる場所、イベント、そして動画などの発信を組み合わせていきながら、川越を国内外に売り込んでいけると思います。そこで、予算が限られた中ではあると思いますが、川越市のデジタルトランスフォーメーション広報戦略について、そして川越市のセールス・プロモーションについてもお聞きしたいと思っています。
回答7: ホームページやSNS、YouTubeなどにより情報発信を行っています。
アクセス数等について、市公式ホームページの閲覧回数は、月平均で約180万回、登録者数等は、ツイッターのフォロワー数が約3万2000人、インスタグラムのフォロワー数が約1700人、フェイスブックのフォロワー数が約1100人、LINEの「友だち」が約1万3000人、YouTubeのチャンネル登録者数が約3800人となっています。(広報室)
質問8: YouTubeなどには情報が多く掲載されておりますが、その分、必要な情報が目にとまりにくいと感じますが、市のお考えを伺います。
回答8: 川越市のYouTubeチャンネルについては、ホーム画面における一覧の作成、再生リストの分類等による情報整理、検索性の向上を意識したタイトル設定など、工夫をしながら情報を発信しています。
こうしたことに加え、ホームページやSNSなど複数のツールの連携など、タイムリーで効果的な情報発信に努めています。(広報室)
質問9: 国の交付金を活用した観光施策についてお伺いします。
市の予算が限られる中、観光庁や文化庁助成金の獲得などに向け、横断的なプロジェクトについて積極的に取り組んでいただきたいと思います。
他の自治体の例を参考にしますと「地域創生関係交付金制度」などを利用、効果をあげているところもあります。国の交付金を活用した観光政策について伺います。
回答9: 国の交付金を活用した観光施策について観光課では、国の地方創生臨時交付金を活用し、観光消費促進事業「小江戸旅ギフトスタンプラリー」を令和3年度と令和4年度の2度にわたり実施しました。
一般社団法人DMO川越では、埼玉県による「彩の国観光振興地域協働事業補助金」を活用し、インバウンドの関係者を本市に招請する「小江戸川越の文化体験ツアー」と題したファムトリップ、いわゆる下見招待旅行を昨年度実施しました。
また、今年度は観光庁による「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」を活用すべく、「100年後まで続く「EDO」文化を世界へ伝える事業」を申請中です。(産業観光部観光課)
質問10: 川越の歴史や文化を理解した川越ファンを増やす滞在型の持続可能な観光の推進についてお伺いします。
回答10:より深い体験ができるよう、観光関連団体や事業者、地域等と連携し、川越ファンの拡大に努めています。また、各観光エリアにおける観光資源の組み合わせによる回遊性の向上、早朝や夜間の観光の魅力創出に努め、滞在型の持続可能な観光地域づくりを推進していきたいと考えています。(産業観光部観光課)
質問を終えて
新型コロナウイルス感染症の影響で一時期中断したとはいえ、川越では、毎日どこかで様々な種類の素晴らしいイベントが行われておりますが、これまで広く周知することができなかったのですが、広告収入で川越市のセールスプロモーションサイトを構築、市民の力を結集した情報発信が今年度末からできることになりました。今後、見守っていきたいと思います。
国の交付金を活用した観光政策についても積極的に取り組んでいただくとともに、ストーリー性の構築も重要で、成果等について注目してまいります。
今は川越は観光客で溢れていますが、蔵の街を食べ歩くだけではやがて飽きが来るのではないかとの危惧も一部にあります。ハード面だけでなく、文化・歴史・教育・芸術、まちづくりなどソフトの面での魅力や素晴らしさを観光資源化、富裕層など様々な人をターゲットにした、付加価値の高い滞在型・回遊型の観光を目ざし、「川越ファン」を増やしたく思います。そして、楽しめる川越を目指します。
議案第45号 川越市蔵造り資料館店蔵耐震化工事請負契約について
さて、文化や歴史資源を観光資源にするためには川越には修復が必要な観光資源も多くあります。こうした資源の修復の機会を増やすことで、若い職人の育成も可能だと思います。そのような中、私は議員として蔵造り資料館店蔵耐震化工事の現場見学に行きました。
蔵造り資料館は、明治26年の大火の後にタバコ卸商によって建てられた万文、小山家住宅であり、その後、市が取得し文化財となった歴史的な建造物です。
数年前から耐震化のための鉄骨補強などの修理を行おうとしましたが、損傷が予想以上に酷かったため、予定が変更され、現在、店蔵の根本修理が行われています。
当初は店蔵だけでなく2番蔵や3番蔵などの全体の建物の鉄骨補強に3億600万円の予算が計上されていましたが、現在の計画では3億4006万円になりました。店蔵のみが解体され、本格的な修理が行われます。部材が修復され、一から組み直されます。請負先は川木建設です。
工事現場に入ると、時の鐘や2番蔵、3番蔵などが並ぶ町屋の敷地内から蔵の街の風情が感じられます。修復観光なども検討されているようですが、蔵のまちの中であるため、工事や交通の安全性なども心配です。
工事の計画としては、今年は部材修復が行われ、来年から屋根や土壁の修理、左官作業、外構工事などが進行し、令和9年に完成予定です。
工事期間の延長は問題ですが、このような手順を踏んで蔵を本格的に修繕し、根本的な修理を行う取り組みは全国的にも珍しいものであり、SDGsの観点からも大きな注目を集めることになるでしょう。
竹小舞を組んで土を小舞に打ち付けて壁を厚くする工法や、伝統的で再生可能な方法を活用し、映像などによる詳細な記録はもちろんのこと、修復の過程に若い技術者や学生などが参加できれば、技術の継承が可能になると思います。大正時代の関東大震災から蔵が地震に強かったことがわかっています。
蔵の耐震性について改めて考える機会になりそうです。