2024年9月議会における小林範子の一般質問「中央公民館分室の有効活用について」全文を掲載します。
中央公民館分室の有効活用 (一般質問小林範子)
おはようございます。議長の発言のお許しをいただきましたので、通告をしております「中央公民館分室の有効活用」につきまして、一般質問をさせていただきます。
平成31年4月から、老朽化のため貸出停止中の「中央公民館分室」ですが、由緒ある貴重な建築物でありながら、耐震上の問題などから、現状は休館を続けています。
元々は中央公民館分室の建物は、東京三田に久松定謨(ひさまつ さだこと)伯爵邸として建てられた建物です。久松定謨氏は、かつて松山藩主であった久松家当主で、長く陸軍武官としてフランス駐在、そのせいかハイカラ趣味で、大正時代、松山城の麓に萬翠荘(ばんすいそう)という鉄筋コンクリート造りのフランス風洋館を別邸として建設した人物です。この萬翠荘は、現在、国の重要文化財になっています。
ちなみに久松家は久松松平家といい、初代久松貞勝の母は徳川家康の母、於大の方。川越市は徳川家康とゆかりが深く、この分室は、本丸御殿や喜多院などとの歴史文化とも繋がります。
さて、その久松定謨伯爵の東京三田の本宅を、小泉八雲別名、ラフカディオ・ハーンの長男の小泉一雄氏が昭和3年に三橋村(大宮市)へ移しました。その後、その後、昭和14年に「山吉」で知られる山田屋の屋号を持つ呉服太物商の渡辺吉右衛門氏によって、川越に移築されたという由緒のある建物です。
埼玉県内初のデパート建築である一番街にある「山吉ビル」(現在は保刈歯科醫院が入っている)との関わりも含め、川越の物資集散と商業都市川越の発展にみる歴史的風致の観点からも貴重な中央公民館分室であることから、中央公民館分室は、川越の貴重な歴史的建造物として、様々な可能性を大いに持つ施設と言えるのではないでしょうか。
南側には素晴らしい庭園が配置されています。ふすまのひきて金具など見事な金工細工の松、竹 梅が彫られています。
さて、小泉八雲であるラフカディオ・ハーンは1850年生まれ。ギリシャのイオニア諸島レフカス島に生まれました。父はアイルランド出身で、イギリス軍の軍医。母はマルタ島生まれで、アラブの血も混じっていたと伝えられるギリシャ人。ニューオーリンズに移住、この地はラフカディオ・ハーンにとって重要な都市、各国、各地域の文化が混血しあうこの街で10年間を過ごしました。万国博覧会が開催された折、日本に関心を持つようになり『古事記』を読んで日本に。松江でセツに会い、結婚。セツとの出会いは決定的で、日本に永住、故郷を持ったのです。やがて子供が生まれ、ハーンは帰化、小泉八雲となり、自然と共存する人間の姿など日本を愛し、『怪談』など日本の怪談の本を多く書いて世界に発信しました。
小泉八雲の長男、一雄氏は文筆家で、一雄氏の孫、小泉時氏の著書『ヘルンと私』の中には、まさにこの中央公民館分室の建物の部屋の写真があり、そこに小泉八雲が実際執筆に使用していた机が掲載されています。
さて、この分室の建物の保存は、同時代に建築された保岡勝也設計の旧川越貯蓄銀行や第八十五銀行本店、旧山崎別邸、山吉ビルといった歴史的建物との繋がりを浮き彫りにすることにもなります。これらの建物は、川越が商業都市として発展した時代を象徴するものであり、中央公民館分室もその一部として位置づけられます。したがって、この建物を保存することは、川越の歴史的景観と文化的遺産を一体的に守り、地域の歴史を次世代に伝える重要な役割を果たすことになります。
渡辺吉右衛門氏は保岡勝也設計の山吉ビルを建てていますが、旧山崎家別邸のような建物も別邸としてつくることは出来たはずです。しかしこの建物を移築しています。それは、この建物への特別な愛着、つまり小泉八雲ゆかりの、あるいは、久松伯爵邸ということがあったのではないかと感じるというお話も詳しい方から伺っています。
こう考えますと、川越を語る上で重要な豪商たちに関わるこれらの建物は、今後、セットで伝えて行くことが重要であると考えられます。
以上より、建物本来の価値が活かされないまま、放置されることは問題ではないかと思います。歴史文化を生かした遊休施設の有効活用という観点から、中央公民館分室について、改めて活用を検討できないかと思います。そこで質問に移りますが、そもそもなぜこの歴史ある施設が公民館になったのか、ということについてお聞きしたいところですが、そのことに答えられる方はおられず、資料も残っていないということでした。そこで質問です。
1.中央公民館分室の開館から休館までの経緯について伺いたい
2.中央公民館分室の開館中はどのように活用されていたのか伺いたい
3.中央公民館分室の利用人数の実績について伺いたい
4.中央公民館分室の維持管理費は、休館中も含め、どれくらいかかっていたのか伺いたい(中央公)
5.隣接する勤労会館跡地について、歴史と現在までの経緯、駐車場使用料収入について伺いたい(管財課)
6.川越の豪商や小泉八雲と分室との関わりについて市はどのように認識しているか伺いたい
7.分室の耐震診断の結果及び改修をするとしたらどの程度費用がかかるか伺いたい
8 分室を今後どのようにするのか。現在までの検討状況について伺いたい以上を一回めといたします。
(1回目 答弁)
1 中央公民館分室の開館から休館までの経緯について伺いたい。
[答弁](中央公民館)
中央公民館分室の開館から閉館までの経緯についてでございます。
中央公民館分室は、川越市六軒町2丁目15番地1にございます敷地面積1076.85平方メートル、床面積169.53平方メートルの木造平屋建ての近代和風建築でございます。
もともとは、久松(ひさまつ) 定模(さだこと)伯爵邸として東京の三田に建築された建物を小泉八雲の長男一雄氏が譲り受け、昭和3年にさいたま市に移築しました。その後、昭和14年に川越の呉服商「山吉(やまきち)」の渡邊(わたなべ) 吉(きち)右(う)衛門(えもん)氏によって買い取られ、現在の六軒町に移築されました。
昭和58年3月にこの土地・建物を川越市が買収し、同年7月から中央公民館分室として開館し、その後約35年間、主に公民館の貸室として活用してまいりました。
平成30年に、シロアリによる浸食がみられるなど老朽化が著しい状況であったため簡易耐震診断を実施したところ、倒壊する可能性が高いとの診断結果となり、安全性が確保できないことから、平成31年4月から休館して現在に至っております。
2 分室の開館中はどのように活用されていたのか伺いたい。
[答弁](中央公民館)
分室がどのように活用されていたかでございます。分室は貸室が和室の3室でございまして、主に囲碁や詩吟、舞踊、ヨガ等の団体が利用しておりました。また、川越の歴史に関する講座などで公民館主催事業として利用したこともございました。
3 分室の利用人数の実績について伺いたい。
[答弁](中央公民館)
分室の利用人数の実績についてでございます。
休館前の過去3年間の利用人数及び使用率についてお答えいたします。
平成28年度の分室の利用人数は、14,558人で使用率は41.8%
平成29年度は、14,443人で43.5%
平成30年度は、14,592人で42.0% でございます。
また、比較対象として近隣の中央公民館、南公民館、北公民館の和室の平均使用率についてもお答えしますと、
平成28年度は、53.5%、
平成29年度は、53.4%、
平成30年度は、52.3%、となっております。
(参考)
使用率は、1日4回ある貸室スケジュールのうち、貸室ごとに何回使用されたかの割合で算出。
4 分室の維持管理費は、休館中も含め、どのくらいかかっているのか伺いたい。
[答弁](中央公民館)
分室の維持管理費についてでございます。
休館前の過去3年間の維持管理費は、年間の平均で約440万円ほどで、その主なものは受付業務の委託料でございました。
休館後の維持管理費は、年間約60万円程度で植栽管理や簡易清掃に関する費用でございます。
5 隣接する勤労会館跡地について、歴史と現在までの経緯、駐車場使用料収入について伺いたい。
[答弁](管財課)
勤労会館跡地についての歴史と現在までの経緯等についてでございます。
公共職業安定所として利用されていた土地建物を、昭和43年3月の公共職業安定所の移転に伴い、川越市勤労会館として埼玉県から取得いたしました。
その後、川越市勤労会館は昭和43年7月から平成30年6月までの間、川越地方労働組合連絡協議会が川越市との有償貸付契約に基づき利用しておりましたが、建物については老朽化を理由に令和3年8月に解体をしております。
解体後は暫定活用として、民間事業者との間で駐車場用地として有償貸付契約を締結しており、賃貸借料は月額22万5000円、年額にすると270万円でございます。
6 小泉八雲や川越の豪商と分室との関わりについて市はどのように認識しているか伺いたい。
[答弁](中央公民館)
小泉八雲や川越の豪商と分室との関わりにおける市の認識についてでございます。
分室を開館する際に作成したパンフレットによりますと、小泉八雲の長男一雄氏が久松家から建物を譲り受け、現在のさいたま市三橋に建物を移築し、その家で父、八雲の形見の机に向かい、父を憶う(おもう)「思い出の記」を執筆したとされています。
また、その後、一雄氏が引っ越しをした後の昭和14年に川越で呉服商を営んでいた豪商「山吉(やまきち)」の渡邊(わたなべ) 吉(きち)右(う)衛門(えもん)氏が買い取り、現在の川越市
六軒町に移築をしました。それが現在の建物でございます。
市は、以上のような認識のもと、分室は小泉八雲や本市の豪商に縁(ゆかり)のある建物であることをPRしてきた経緯がございます。
7 分室の耐震基準の結果及び改修をするとしたら、どの程度費用がかかるか伺いたい。
[答弁](中央公民館)
分室の耐震診断の結果及び改修費用についてでございます。
平成30年に簡易耐震診断をしたところ、大地震の際に「倒壊する可能性が高い」という診断でございました。
その後の令和元年に、伝統耐震診断やシロアリ診断について詳細な診断を行い、伝統耐震性評価指数C値で総合的に「やや危険」との診断がなされ、また、シロアリ診断では防蟻処理については、相当な時間と費用を要するとの結果でございました。
次に改修の費用についてでございますが、古民家鑑定の観点からは、6段階評価の上から3段目の「コストがかかるが再生可能」となっております。類似事例を参考にしますと、防蟻処理と耐震改修費用として1億円を超えると想定しております。
8 分室を今後どのようにするのか。現在までの検討状況について伺いたい。
[答弁](中央公民館)
分室の今後における検討状況についてでございます。
現在分室は、老朽化が著しいことなどから休館を継続しておりますが、令和元年12月の文化教育常任委員会で報告しましたとおり、シロアリ及び耐震診断の結果を踏まえ、用途廃止を含めた今後の対応について検討をしてきたところです。
令和5年度に教育委員会内において、公民館としての再生や文化財的活用もしないとの結論を出しました。
その後、市長部局を含めて利活用の可能性を探るため令和6年8月に関係課長会議を開催し、さまざまな可能性について検討を始めたところでございます。
今後も隣接している旧勤労会館跡地と合わせた利活用も含めて、方向性を定めるべく検討を続けてまいりたいと考えております。
(2回目)
それぞれお伺いいたしました。ご答弁から中央公民館分室は公民館として開設して閉館後の現在まで40年経つ中で、主に囲碁や詩吟、舞踊、ヨガ等や公民館講座に利用され、休館前の3年間で言えば毎年約14000人が利用し、約40%の使用率ということでしたが、そんな中、分室には深い思い出や愛着を持つ市民も少なくありません。
またご答弁からは、市としても当時は川越の豪商や小泉八雲に縁(ゆかり)のある建物であることをPRしてきたとのこと、耐震診断では総合的に「やや危険」との診断がなされ、「コストがかかるが再生可能」という想定になるとのことでした。つまり、シロアリ診断で相当な時間と費用を要するとのことから、改修の費用についてはそれらを含めて1億円を超えるということでした。
しかし、改修に関しては、民間の専門家にお聞きしますと、かなり費用を抑え耐震改修を行うことも可能なようです。
また、ご答弁では分室の維持管理にかかる費用は、主に受付業務の委託料で、年間平均で約440万円程。休館後の維持管理費は、植栽管理や簡易清掃で年間約60万円程度とお聞きしました。隣接する勤労会館跡地の駐車場としての、賃貸借料も月額22万5000円、年額270万円ということでしたが、ここでも、植栽管理や簡易清掃管理もふくめて、運営を民間と連携して行うことで、建物を生かしながら効率的、効果的な運営ができるのではないでしょうか。
今後、公民館としての再生や文化財的活用もしないとのことですが、歴史的文化的価値を持つ中央公民館分室の活用方法について、様々な可能性についてどれだけ幅広い情報共有のもとに検討されているのでしょうか。
今年、総額1億1991万8千円の予算で行われる観光庁のオーバーツーリズム対策事業の中で、回遊性を高めるための「多様な観光拠点への誘客促進」に1000万円が計上されています。
その際にも対象とする観光拠点について、中心市街地周辺地域及び川越城本丸御殿地域、郊外では伊佐沼周辺地域を中心に考えているようですが、いま利用されていない遊休施設にも目を向けることができるといいと思います。つまり、回遊案として「豪商の道すじルート」などというものを作り、丹徳庭園、山崎別邸などと東西につなぐことで、南北の蔵の街の通りのオーバーツーリズムという課題の解決にもつながってゆくのではないかと思います。
そのためには、小泉八雲ですが、例えば、現在、松江、焼津等に小泉八雲記念館があるのですが、川越にも小泉八雲記念館なども作りうるわけです。そうなれば、来年後期のNHK朝ドラ「ばけばけ」の主人公が小泉八雲の妻「セツ」がモデルだそうですので、全国から人をよび込み、宿泊型観光を促進する良いきっかけになるのではと思います。
さらに大きく言えば、持続可能な観光のための観光のグランドデザインとして、また、オーバーツーリズム解消のための回遊ルートの一つとして、「豪商の道筋ルート」や分室の利活用についてどう考えるか、お聞きしたい。
- 中央公民館分室付近は今も歴史的建造物は残っているが、このエリアを回遊できる観光ルートとして活用することについて、市はどのように考えているのか伺いたい。
さらに、分室においては、「観光客の居場所」と「地域住民の居場所」両面を持つ場としての活用ができるのではと思います。地元と触れ合える場としても、公民館の場所の不足からもふさわしい場所になると思います。 ニッポニアが山梨県小菅村で行っている「さとゆめ」では、観光客と地元の人が交流する場、相互理解の場を作り出しています。私ごととして地元の人が観光に関われるそのような場所は川越にも必要と思われます。そんな中から川越に住んで良かったというシビックプライド、すなわち市民の誇りの醸成にもつながります。また子供達が歴史や伝統文化を知り、体験する場にもなります。
観光の視点から言えば、「食べ歩き」観光から「ふれあう」観光への転換を図るため,体験・学習型コンテンツの充実など川越の文化や知恵,匠の技を心で“みる”観光を進める。また,地元の人びととのふれあいが魅力的な観光資源であることを踏まえ、観光客が川越の日常生活を体験できる取組を推進できたら素晴らしいと思います。
市民が子どもから大人まで川越の魅力を知り、楽しむ取り組みを広げながら、地域の人々が、観光客を温かく迎え、観光の新たな主体として存在感を発揮する都市を目指す、そのような市民と観光客の触れ合える場ができたら素晴らしいと思います。そこで
10.市民と観光客の触れ合える交流型の観光事業を推進することについて、市はどのように考えるのか伺いたい。
さらに大きな視点で申しますと、公共施設については、市では人口が急増する1970年代前半から1980年代前半にかけて集中的に整備されてきた中で、建設後30年から40年程度経過し、老朽化した公共施設等をそのまま放置することはできないが、一方、全ての公共施設等を更新することも、厳しい財政状況を踏まえると困難であるとしています。
11.公共施設の老朽化の現状と課題について伺いたい(総合政策部 社会資本マネジメント)以上を二回めといたします。
(2回目 答弁)
- 中央公民館分室付近は今も歴史的建造物が残っているが、このエリアを回遊できる観光ルートとして活用することについて、市はどのように考えているのか伺いたい。
[答弁](観光課)
中央公民館分室付近のエリアを回遊できる観光ルートとして活用することについてございます。
このあたりには、中央公民館分室のほか、飲食店として活用されており、国登録有形文化財でもある旧六軒町郵便局や、明治初期に建築され、体験や宿泊施設等として活用されている丹徳庭園等の貴重な建造物が所在しており、これらの建築の経緯や魅力を充実させることによって、こうした施設に興味を持っていただける可能性があり、また、例えば、川越駅に向かう際の立ち寄りとしてルートを設定し、ご案内することにより、一番街周辺部に集中している観光客の分散化や滞在時間の延伸につながることが期待されるところでございます。
10.市民と観光客の触れ合える交流型の観光事業を推進することについて、市はどのように考えるのか伺いたい
[答弁](観光課)
市民と観光客が触れ合える交流型の観光事業を推進することについてでございます。
市民と観光客の交流につきましては、一例を申し上げますと、毎週日曜日及び祝日に川越まつり会館で行われているお囃子の実演、 春に行われている「江戸の日」での催事、秋に行われているShingashiめぐり・わくわくフェスティバルでの各体験事業等により推進されているところでございます。
こうした交流により、市民の皆様にとっては川越に住んでいることに対する誇りと愛着が醸成されるとともに、観光客にとっても満足度が高まる機会の一つになること、また、地域で生活する市民の皆様と観光客との相互理解が深まることが期待されることから、本市といたしましても、引き続き、交流型の観光事業を推進していきたいと考えているところでございます。
11.公共施設の老朽化の現状と課題について伺いたい
[答弁](総合政策部 社会資本マネジメント)
公共施設の老朽化の現状と課題についてでございます。
老朽化の現状につきましては、令和6年3月30一日時点における公有財産台帳によりますと、本市が所有する公共施設の延床面積は約784,000平方メートルでございますが、そのうち建築後40年以上経過した施設の延床面積は約約431,000平方メートルで、約55%を占めており、多くの施設で老朽化が進行しております。
課題といたしましては、老朽化が進む公共施設について、市民の皆様や職員が安全に利用できるよう適切な維持管理を努めるとともに、機能維持のためには、建築から20年や40年の節目には、一定程度規模の改修も行っていく必要がございます。
一方で、限られた財源で、効果的、効率的に施設サービスを提供するためには、更新時期を迎えた公共施設について適切な規模や適切な配置等の検討を行うとともに、施設の統廃合等の検討も併せて進める必要があると考えております。
(3回目)
それそれご答弁いただきました。一般論として、老朽化が進む公共施設について、適切な維持管理とともに、機能維持のために、建築から20年、40年の節目にメンテナンスが必要ですが、一方、限られた財源のなかで、効果的、効率的施設サービスの提供のため、更新時期を迎えた公共施設については、施設の統廃合等の検討も併せ進める必要があるとのことでした
さて、移築してから80年の時間が経っております分室につきましては、公民館としての再生や文化財的活用をせず、市長部局を含めて利活用の可能性を探る、さらに、旧勤労会館跡地と合わせた利活用も含めてという方向性のお話を伺いましたが、まちなかの中央通りに近い便利な場所にあるということで、土地そのものの価値ばかりに重きが置かれてしまい、建物そのものの歴史的文化的価値は議論されず、価値についての情報が共有されず、売却など検討されることになったらまことに残念なことです。
そこで、中央公民館分室を今後どのようにするのか、観光利用としての可能性などがあるなか、市の遊休施設の管理活用手法としてどのようなものがあるのでしょうか。
他の都市を例にとれば、一つは市の保有財産を公募型プロポーザル方式で民間事業者に売却する方法です。新潟市の旧会津八一記念館の場合、これは会津八一の偉業を伝え資料を保存する会館ですが、耐震強度不足や保存環境の問題から移転閉館することになりました。その際、民間事業者の企画力、資金力、ノウハウを活用し、外観を維持、建物を壊すことなく、耐震化をし、市民が利用可能なスペースの設置などを条件に公募する手法とっています。
また、民間の総意工夫に富んだ発想を生かした提案による公募型プロポーザル方式もあります。市が保有したまま民間事業者に貸し付ける方法です。貸付は現状のまま、なお建物については、内装・外装の変更や新たな建物を建築することも認められたりもします。古民家の再生などによく使われる手法です。例えば、鎌倉市の例ですが、旧村上邸の保存と活用に使われた手法で、市が保有したまま定期賃貸借契約を結ぶ方法です。旧村上邸は、東御門にある広い敷地と雰囲気のある竹垣や門などを持つ鎌倉の典型的なお屋敷ですが、鎌倉市に遺贈された建物です。その後、このプロポーザル方式で民間事業者と定期賃貸借契約を結び、保存活用されています。
いわゆるスモールコンセッションとは、自治体が取得・保有する空き家や遊休公的不動産といった比較的小規模な施設の所有権を自治体などが持ったまま、リノベーションや賃貸、管理などの運営全般を民間事業者に委ね、官民連携で地域を活性化する手法です。自治体にとっては住民サービスの向上や維持管理費の削減が、民間事業者にとっては事業機会の拡大や地域への貢献といった効果が期待できます。地域の中小企業も運営に携われることで「エリア価値」の向上につなげる仕組みです。閉鎖された校舎の教室のスペースを小規模事業者に提供して地域活性化を図ったり、空き家を利活用して宿泊施設にしたりするだけでなく、地域やそこで暮らす住民との交流ができるような仕組みです。
さて、先ほどの小泉八雲のひ孫にあたる小泉凡さんは八雲を文化資源として現代にいかす活動をしており、2008年からNPO法人松江ツーリズム研究会を行っているのですが、八雲が書き記した怪談の地を巡る「松江ゴーストツアー」を行っています。きっかけは、八雲が育ったアイルランドの首都ダブリンを訪れた際、「ダブリン・ゴーストツアー」に参加したことでした。アイルランドには怪談や妖精の話が残っていますが、アイルランドは、それらを無形文化遺産として活用しています。
もともと松江は城下町なので、築城伝説をはじめとした怪談がありましたが、怪談が町の資源だとは、そのときは誰も気が付いていなかったそうです。ゴーストツアーの地元の語り部の育成にも力を入れているそうです。これは同じく城下町である川越でもできそうです。
民間団体の例では、NPO法人蔵の会では川越の貴重な建物を保存・利活用を提案してゆく目的で、「中央公民館分室の今後を考える会」を発足させ、継続的に分室活用についてのトークセッションやワークショップを開催しています。
公民館分室に関わってきた方々のお話を聞き、また市民から分室の利活用について様々なアイデアを募集しました。また分室を利用していた団体や周辺自治会のお話を伺い、どのような利用が望ましいのか広く意見を聞き、検討することや、建物だけでなく周りの地域の状況も踏まえ、地域全体が活性化できるような利用方法を考えていくこと、さらには、建物の保存のみではなく、資金面での方法も考え、積極的に提案や協力を模索しているようです。
このように、歴史的建造物を官民連携で事業運営することは、市にとって管理負担を減らすことにつながります。
さて、令和6年3月、川越市公共施設・インフラ施設複合化に関する市民アンケート調査が行われました。それによれば、「公民館X図書館」 「図書館X美術館・博物館」 「公民館X集会施設」 「ホール施設X集会施設」 「美術館・博物館X観光関連施設」など複合化したら良い組み合わせの可能性について市民は高い関心を持っています。
そこで、この分室についても「小泉八雲記念館X集会施設X観光関連施設」というような形での再生も視野に入れるべきだと思います。
中央公民館分室を今後どのようにするのか、官民連携による有効活用の観点から2つの質問をして終わりにしたいと思います。
12 老朽化している市の施設の今後の維持管理方法について、公共施設の官民連携による有効活用の観点から、市の考えを伺いたい。(社会資本マネジメント課)
13 民間の資金やアイデアを活用した維持管理方法を、分室の利活用に取り入れることについて、市のお考えを伺いたい。(中央公民館)
(3回目 答弁)
12 老朽化している市の施設の今後の維持管理方法について、公共施設の官民連携による有効活用の観点から、市の考えを伺いたい。
〔答弁〕(社会資本マネジメント課)
老朽化している市の施設の今後の維持管理方法についてでございます。厳しい財政状況の中、公共施設を安全に維持管理し、また、有効活用を図っていくためには、民間事業者のノウハウを活用した管理・運営手法を導入する事も有効な手段の一つと考えております。
老朽化している公共施設の活用を検討する際には、行政が担うべき役割を整理した上で、民間の創意工夫により効率的、効果的なサービスの提供が見込まれる場合につきましては、積極的に民間事業者との連携を図っていく必要があるものと考えております。
13 歴史的建造物としての価値を生かした中央公民館の利活用について、
民間の資金やアイデアを活用した維持管理方法を取り入れることについて、市の考えを伺いたい。
[答弁](中央公民館)
民間の資金等を活用した維持管理方法を分室の利活用に取り入れることについての市の考えでございます。
先程もご答弁しましたとおり、分室の建物の再生、維持管理には多額の費用がかかり、これを市が自力で行うには多くの課題があります。
一方で、立地や旧勤労会館跡地を含めた土地の面積や形状を鑑みると価値の高い財産と考えられます。
分室の利活用をする場合には、民間の資金やアイデアを活用する手法は選択肢の一つとして様々な可能性を探ってまいりたいと考えております。