スウェーデンの女性ボランテイア議員の活躍について聞きました。(女性の眼から見たスウェーデンの市民社会⑤)

2014年にウプサラを訪問した際の報告シリーズ第5章です。女性の目からみたスウェーデンの市民社会女性ボランテイア議員の活躍*地方議会における若者の政治参加のしくみをレポートします。

第5章 市議会女性ボランテイア議員(環境党)と選挙
スウェーデンでは、議員の半数は女性、市議会議員の中心メンバーとしてボランテイア議員が活躍。環境党ではどのように議員を育てているのか、また、若者の政治意識の育成に大きな役割を果たす学校への環境党の取組みを取材。

日本では、市議会議員は有給ですが、スウェーデンでは、市議会議員の中心メンバーとしてボランテイア議員が活躍しています。その活躍をみてみましょう。議員は、余暇政治家(ボランテイア)と執行委員(有給)から成り立ち、市長は市議会の執行委員長が勤めることになっています。議院は男性51% 女性48%です。(2014年)

環境党所属の議員 マレーナ・ランチさんにお話を聞きました。市議会はボランテイアで、福祉のNPOの有給職員として普通に仕事を持つ余暇議員(ボランテイア議員)です。2006年に24歳で初めて環境党の党員になり、8年になる今年です。社会保障に関係した委員会に参加して健康と介護委員会の副委員長を務めています。

マレーナさん議員の仕事と日常の仕事についてお聞きしました。「議員としての仕事としては、日常は平均週に3日の夜を市議会、専門委員会、環境党が行なっている準備のための委員会といった政治活動にあてています。日常の仕事は非営利の障害者の団体のプロジェクトリーダーとして働いています。

議員活動と仕事を両立する中、フルタイムの仕事を休んだり、遅れたりすることもあり、結果を出せないというジレンマからストレスを感じるそうです。また政治家としてキャリアをつむためにはいろいろな会議に参加する必要がありますが、フルタイムで働き、一人で子育てしている女性議員の場合は、昼の会議は仕事を休んで、夜は子どもとの時間を割くことになり、工夫してでも無理がある、このことはなかなか理解してもらいにくいそうです。

女性特有の問題としては、ネットでのいやがらせがあるようです。若い女性の政治家などの活動をFacebookなどで邪魔するような内容を送るというもので、加害者の95%が30歳以下の男性だとわかっています。これは若者と失業問題とも関わっています。 党では学校教育が大切だが、将来に帯する不安のある若い男性に対する対策が、失業対策と絡めて必要と考えているそうです。。

マレーナさんのように若い政治家を輩出する背景はどこにあるのでしょうか。スウエーデンで若者の投票率は80~90%と高く、高い。若者の政治参加への強い関心がうかがわれます。全国の高等学校を中心に任意で(模擬選挙)が行なわれ2010年には1200校、36万人が参加しました。このように政治参加には学校が大きな役割を果たしています。学校で政党を学校に呼んで議論したり、また学生が政党を訪問したり、課題についてインタビュ―したり、調べたりして政治に対する意識を高めてゆきます。

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若者の政治参加について、環境党の場合は、18才から25歳が、最も投票率が高いのですが、彼らは環境に対する意識が高く、男女平等、難民、移民政策、教育など、関心を持っているテーマが身近な問題であることが支持の理由です。若者を支持層にとりこめると長い期間支持を期待できるので、環境党だけでなく、各政党とも若者を大切にしています。

環境党事務局書記のチャールズフィラードさんにお聞きしました「環境党は、議員の任期に関する党の内部のルールを決めていて、議員の任期は4年ですが、議員として勤められるのは3回まで。そのため常に新しい人を入れてゆく必要があります。市議会議員には、幼稚園の先生や警察官など、多様な議員が生まれるような制度にしています」この環境党のローテーションは他の政党にも良い事例とみられています。

候補者はどう決めるのでしょうか。環境党の場合は、誰でも立候補できますが、党内の選挙管理委員会で、候補者のリストから、男女平等、年齢、移民、農村部と都市のバランスなど考慮し、調整したリストを作成し、それをもとに党員が再度投票して承認を得る形をとっています。候補者のリストは、女性男性交互に並べるそうです。

また政治活動や選挙に関わる資金の面で日本とは大きくことなります。「選挙では、党の大きさにあわせて、各政党に国からの活動資金が拠出され、職員を雇ったり、印刷物を制作したり、選挙のキャンペーンに使用するすることができます。政治資金は基本的に政党にはいるしくみで、。個人は受け取るのは禁止われています。」寄付については民間団体からの各政党への寄付は公開されていませんが、多くの政党は、公開すべきと考えています。

スウエーデンで若者は日本に比べ、政治への意識が強く、投票率は高いといえます。そのスウェーデンでは学生時代を通じて政治参加の意識が養われ、その結果ボランティアでも政治に関わりたいと思う人たちが増え、その結果、政治はボランティア議員で成り立っています。そこにスウェーデンの強さがあると感じました。

このようにスウェーデンでは、教育と政治は関連しあい、若者や女性などの興味を引き出し、政治への参加を容易にし、お金のかからない選挙が、政治に活力を生み出しています。選挙費用は政党が持ち、日本のような選挙への参加に多額の資金を必要としません。こうした事が、若者や女性の政治への参加を容易にしています。

翻って日本のように若者が政治に関心が低く、投票率も低いと、選挙に行って投票する人達も決まってしまい、社会を変えてゆく力にはなりにくい現状を批判するだけでなく、受験勉強一辺当にならない、社会に生きる学校のありかたも模索されます。