スウェーデンの女性国会議員とマイノリティー議員(女性の眼から見たスウェーデンの市民社会⑥)

スウェーデンの政治のしくみはどうなっているのでしょうか。女性国会議員*スウェーデンの女性国会議員アン・クリステイーン氏エ・ヴェストルンド氏を取材。マイノリティーから政治家への歩みや政治家としての日常を取材。地域による格差や、失業問題と若い女性の保守化など最近の問題点もお聞きしました。(取材、編集、音楽、小林範子)

第6章 女性国会議員*スウェーデンの女性国会議員アン・クリステイーン氏エ・ヴェストルンド氏を取材。マイノリティーから政治家への歩みや政治家としての日常を取材。地域による格差や、失業問題と若い
女性の保守化など最近の問題点もお聞きしました。

2014年当時に取材した、「女性の眼から見たスウェーデンの市民社会」第6章のレポートをお届けします。スウェーデンでは、環境党 社会民主党など国会議員の半数近くを女性の議員がしめており、2010時点で、24大臣のうち半分12人は女性大臣となっています。もっとも女性議員は社会保障や家族などに関連した分野が多いという偏りがあります。

こんな中、エネルギー政策に関わる社会民主党の国会議員アン・クリステイーン・ヨハンソン(Ann-Kristine Johansson)さんと同じ党の国会議員でEU担当でゲイでもあるボリエ・ヴェストルンドさんをストックホルムにある国会にたずねました。

社会民主党の前国会議員アンクリスティ・ヨハンソン氏です。産業委員会でエネルギー政策を担当していました。スウェーデンでは、国民の環境意識が高く、エネルギー議論が活発になっている中で、党は代替えエネルギーを条件に長期的に原発を廃止するという方針を打ち出しました。原発の位置づけを考えるため、いわきから福島をおとずれ、原発20キロ圏内に行って経験したことを伝えています。

ボリエ・ヴェストルンド議員(社会民主党)。は。産業委員会でEUを担当。EU主導の政策以外に、医療、学校、介護についてはスウェーデン独自の政策を持っています。中小企業の問題も担当。地域の問題、地域の均等、平等が課題といいます。

ボリエ氏はゲイの議員でもあります。国会では、同性カップルの養子縁組など家族法に関わる法改正や差別をなくすための政策にも取り組んでいます。

スウェーデンの代表的なゲイの団体、RSFLは70年代になると、アメリカから刺激をうけて運動がはじまりました。また95年の同棲法、2009年には婚姻法が変わったことなども影響しています。ゲイでは91年には初めて国会議員が当選しましたが、残念ながら2年後にエイズで亡くなりましたが、また98年、2002年に数人が議員になりボリエさんもその一人でした。

近年急速にLGBT、つまりレスビアン・ゲイ・バイセクシャル、トランスジェンダーなど性的マイノリティーが社会に浸透してきています。プライドフェスティバル2010では、党の態度は世論の動きに敏感で、議員も個人としてプライドフェステイバルなどに参加しています。

お二人が政治の世界に踏み出すきっかけは、労働組合活動に情熱を燃やしたこと。農業が盛んなヴァルムランド出身で、牛の乳しぼりから職業生活を始めたアンクリスティ氏は農業従事者の組合から。ストックホルムのサービス業出身のボリエ氏は、ホテル・レストラン業従事者組合からです。働く者の権利や生活を高める運動から、政党に入って政治家として歩み始めるのは、多くの社民党議員に共通しています。

アンクリステイ議員は電車で320キロ、3時間片道かけて月曜にスウェーデンへ来て、金曜に地元へかえります。国会にはいったのは1994年当時、息子のデニスさんは2歳だったのであまり子育てはできませんでした。

政治と家族運営を一緒にというのは、なかなかむずかしいうようで。若い女性の国会議員のために女性議長が国会の中に保育所を作りました。

国会議員の待遇については、地方自治体の議員とは違って、専任で報酬は月額6万クローナ(為替相場により70~100万円位)。お金の使い方にはとても細かいルールがある。辞めてからも年金に加算があるなど、かなり手厚い待遇が保障されていますが、退職金、年金など改革し、ほぼ公務員と同じにしようとしています。寄付については、個人と企業が名前を出さず政党に寄付できるしくみになっていますが議論をよんでいます。

スウェーデンでも、若い世代では就職の難しさも相まって、保守回帰とも見える結婚や家事・育児重視の傾向が見えるようです。以前は、男女平等がもっと過激な形で押し進められていましたが、今は、若者の間で少し、昔ながらの価値観に戻ろうとしている傾向がみえています。

アン史は「息子の大学生デニスさんのような若い年代になると、女性は将来、奥さんになって家で子どもをもってイメージをもったりしており、そのことは、若者の失業も影響したりしているかもしれませんが」 と語ります。

スウェーデンでは、男女ともに社会で働き、税をおさめることが大前提で、そのため育児休暇やプレスクールなど支援政策は、相当充実させることができています。保育や介護など、個人的に。基本的には何もしなくてよいことになっています。

しかし、実情は、各自治体によりかなり大きなばらつきがあります。とくに高齢者に必要とする支援が十分届いていない現状が伝わってきます。今後は自治体によって益々格差がひろがるともいえるようです。

介護サービスの実情は、介護を担う自治体の財政が苦しく、人手も介護施設の収容数も不足している自治体も多くみうけられるようです。不十分な公的支援に不安や不満を訴える老親のもとに通って助けなくてはいけない子世代が漸増している。介護の実施責任は各自治体なので、介護の量・質の決定には住民の意志が反映されます。

(まとめ)労働組合活動から国会議員へ、農村地方の女性やゲイなど多様な国会議員が活躍しているスウェーデンでは、男女平等も過激な形で押し進められてきました。が、今は若者の失業も影響していて、若者の間では仕事との関連で、男女とも子育ての在り方など柔軟に対応しながら人生を模索する姿がうかがわれます。