イタリアの魅力とルネッサンス芸術

西洋の文化を理解する上で、どうしでも避けて通れないのが、
ギリシャローマ神話とキリスト教です。ギリシャ神話の題材などは
現代まで映画や文学、彫刻、さまざまなところに繰り返し生かされて
います。これからソフトパワーの時代にあって、西洋文化を理解する
ために、またみずから発信するためにもこのような歴史の厚みを知って
おくことは重要と考えられます。

西洋の人々の精神的源流は古代ギリシャ・ローマにあるといえます。
この時代を古典古代といいます。その後 中世キリスト教の時代を経て、
ルネッサンスに古代ギリシャ・ローマ文化が再生します。

13、14世紀のイタリアでは、多くの都市国家が成立しました。
そこでは、織物や商業・貿易業など市民の同業者の組合が経済力を持ち、
聖堂の建設など美術家を雇ったり、力を発揮しました。

フィレンツエのメデイチ家は、銀行業を営んで、莫大な権力を掌握し、
航海での東方貿易では価値ある文物を手にいれます
今日風に言えば、メセナ(学芸擁護者)として、学問・芸術・建築の
パトロンとなり、質的にも量的にも従来とはスケールを異にする旺盛な活動を
展開しました。この時期コジモの人文主義的個性も相俟って古典研究にも力を
注ぎました。文芸を愛好したことから多くの芸術家に仕事を提供する当代一の
大パトロンとなりました。

ヨーロッパで最初の図書館ともなるサン・マルコ図書館、バチカン図書館、
フィエ-ゾレのバディアにも宗教書の図書館が創設されていきました。多数の
筆写家が雇われ写本が生み出される等書籍コレクションにも傾注しました。
また、プラトン・アカデミーの構想と援助、アリストテレス研究の援助等々、
学術サークルの援助も惜しみませんでした。

古典文献の収集のみならず、古代の美術品や工芸品も寄せ集めました。
建築活動も前例の無いスケールで行われ、ジョバンニの代に着手されたサン・
ロレンツォ聖堂の改築事業の推進、サン・マルコ修道院の再建事業やその他
各地の聖堂、図書室、巡礼者宿泊所の建設を指揮しています。

工房では、万能の職人芸術家が生まれ、ダンテや美術では14世紀のチマブーエや
ジョットにはじまり、16世紀のダビンチ、ミケランジェロやラファエロが現れます。
特に『神曲』はトスカナ語で書かれた重要な作品です。内容的には、著者のダンテ
自身が古代ローマの詩人ヴェルギリウスの案内で、地獄、煉獄、天上界を旅すると
いうもので、キリスト教世界観と、ダンテ自身の価値観双方が含まれているという
意味で、中世カトリック文化とルネサンス文化の橋渡しをしたと考えられています。
(源氏物語の京都と一緒)

(15世紀には)キリスト教とは異教であるはずのギリシャ神話の神々
が芸術絵画の主題になって、宗教のみの題材では表現できなかった多く
の可能性が表現できるようになりました。神々は自由で裸体であったり、
美しく見るものを喜ばせながら、神話に託された深い意味を味わえるという
大変な魅力的な素材で、その後一人歩きをはじめます。

ルネサンスの人々にとって古代はイマジネーションの宝庫でした。
また、ルネサンス以前は自然はどちらかというと野蛮な存在でした。
(日本人の完成と違ってネイチャーた対立するもの)
ルネッサンスでは古代ローマのヴェルギリウスに代表される古代の
詩人が歌う森と田園や羊飼いたち(彼らは詩人であり音楽家であり
恋するものである)、アポロやムーサであり、美しい妖精や半獣神
パンが住む理想の世界でした。アルカデイアが理想世界でした。
こういったことが芸術作品に反影されるのです。絵画や彫刻、音楽だけでなく、
現代の企業のブランドや映画、あらゆるところに隠れています。(例 ナイキ
ギリシア神話に登場する勝利の女神)NIKE